現地に到着後に行う
録音環境のチェック
まずはお目当ての列車や車両がある場合、少しでも早く現場を訪れて、録音環境をチェックしておこう。特に通過音を線路端で収録する際には、時間に余裕をもって到着しておけば、雑音の有無や自動車の通行頻度、民家の存在なども確認できる。そして、踏切や構内放送の音量がどの程度なのかも、チェックできる。
また、吊掛モーター(2*)の唸り具合や気動車(3*)の駆動音、電気機関車のブロワー音(4*)などは、録音対象からどのくらい離れるのがベストなのか、これを把握しておきたい。さらに、警笛を鳴らすタイミングというのもどの辺りなのか、情報を集めておきたいところである。
(2*)…編集部注/台車枠と車輪軸の間に設置されたモーター
(3*)…編集部注/ディーゼルエンジンやガソリンエンジンを動力源にしている鉄道車
(4*)…編集部注/発電ブレーキの熱を冷却するための送風機の音
最大の難関は蒸気機関車である。汽笛は近くで鳴らされてしまうと音割れに繋がってしまうので、ドラフト音はどの辺りで録るべきなのかを考える必要がある。なお、線路端での録音は写真撮影を楽しんでいる人と場所が重なることが多々ある。その場合、シャッター音や操作音が入ってしまうことが多いので、少し離れた場所に陣取るようにしよう。
音鉄にとって最大の敵は
録音成果に影響する「風」
音を記録する際に最も恐れなければならないものが「風」であり、録音成果はこれによって大きく変わる。そよ風のようなものであっても、マイクはしっかりとその音を拾ってしまう。また、自然の風だけでなく、列車の入線や通過に伴うわずかな瞬間にも風は発生する。録音機材にはローカットフィルター(5*)というものが備わっているが、気休め程度と考えよう。
(5*)…編集部注/低周波の音をカットするフィルター
「風防(ウインドジャマー)」と呼ばれるものも市販されており、スポンジを用いた廉価なものや、5000円程度の羽毛を用いたものがある。マイク部分に布や家庭用スポンジを当てるとか、スポンジの中身をくり抜いて機材やマイクに被せたり、ストッキングを機材にかぶせたりしてみるのも手。見た目はかなり怪しくなるが、ある程度の効果は期待できる。