逆に売り手不足の状態になれば、せっかく2GBプランに加入したのに結局、メルカリモバイルから550円の割高のギガを買わなければいけなくなります。そうだとしたら新規の加入もちょっと踏みとどまる気持ちになりそうです。

 この事業、ビジネスとして考えた場合は、売り手と買い手が市場にかなりの人数存在して、ギガの流通における需給バランスが良くないと成立できないと、加入者が増えないことがわかります。

 もう一歩踏み込んで戦略コンサルタントの立場で言うと、新規事業としてのメルカリモバイルを成立させるためには自然状態に任せておくと失敗する可能性が高いように感じます。あくまで、これまで新規事業戦略を立案してきた際の経験から申し上げる話です。

 とはいえ、このリスクは乗り越える方法もいくつもあります。基本的には買い手不足が初期段階の壁になるでしょうから、2GBプランについてたとえば2カ月無料のお試しキャンペーンを実施すれば、ギガの買い手人数の不足を戦略的に解消することはできるでしょう。

 対策としてはこんな禁じ手もありえます。わかる人にだけわかればいい例を挙げると、仮にヤマダくんという大富豪がいたとします。彼はお金持ちなので20GBプランを100回線ぐらい契約してもたいして懐は痛みません。

 メルカリモバイルが個人で何回線契約できるかは調べてみたところ、いまのところ明記されていないようです。悪用を防止するために、たとえばドコモでは個人は最大5回線までしか契約できませんが、仮にヤマダくんの場合は社会的に信用があってメルカリモバイルはたくさんの契約を許可してくれたとします。

 そこでヤマダくんはメルカリにギガがあまり売りにでていないときは積極的に2ギガを200円で売りに出します。一方で買い手が少ないときにはメルカリに売りに出ている200円のギガを積極的に買いあげます。買うときはメルカードで買って、売れたときはメルコインでビットコインに換えればいろいろと儲かるかもしれません。

 そんな大富豪が少数いるだけで、初期段階の流通不全は解消できます。ですから、メルカリモバイル担当の執行役員は、周囲の大富豪の中にヤマダくんがいないかどうか探して頭を下げればいいでしょう。ただ、高く売れる可能性があったギガが安くなるという点で、もし本当にやるなら最初からマーケットメイクをルール化する必要はあると思います。

 話を少し俯瞰させていただくと、私はメルカリモバイルのビジネスモデルは新規事業としてはなかなかチャレンジが多いビジネスモデルだとは思っています。同時に今の日本に必要なのはこのようなチャレンジ精神だと考えています。