
タイミングを問わずに突然発症する印象がある心筋梗塞や脳梗塞。だが、実は「病気になりやすい」危険な時間帯や曜日があるのをご存じだろうか?その背景には、体内リズムの変化や血圧上昇因子などが深く関与している。時間帯に応じた健康管理を意識し、生活習慣を調整することが病気予防の第一歩だ。※本稿は、大塚邦明『時間治療 病気になりやすい時間、病気を治しやすい時間』(講談社)の一部を抜粋・編集したものです。
病気になりやすい
“魔”の時間を知るべし!
じつは、病気には、病気になりやすい“魔”の時間があります。たとえば、心筋梗塞や脳卒中は朝の発症率が高いことが、よく知られています。
しかし、病気になりやすい“魔”の時間は朝だけではありません。朝は約24時間のリズム、すなわちサーカディアンリズムに基づくものですが、じつはそれ以外にも、約12時間のリズム(夕方に増える)、約1週間(7日)のリズム(月曜日に増える)、約1ヵ月のリズム(1週目に増える)、約1年のリズム(冬に増える)に加え、さらにトランスイヤー(約1.3年)のリズム(年を越して、梅雨ごろまでの季節)等に基づくものがあるのです。
すなわち、病気になりやすい“魔”の時間帯は単一ではなく、多重にみられる現象ということになります。
そのため、たとえば高血圧や糖尿病のある方は、その症状が出やすい時間帯に心身に過度の負担をかけないよう気をつける必要があります。薬を服用している人は、“魔”の時間帯に決して飲み忘れをしないよう注意しましょう。
ミネソタ大学のハルバーグ教授は、ヒトの体内時計が発見された1972年以来、各種の病気に現れる“魔”の時間、すなわちリズムに注目し、投薬時間を工夫して治療の効率を上げようという「時間治療」を提唱してきました。病気が起こりやすい時間帯に集中して薬剤を十分に投与すれば、それだけで治療効果を高めることができるからです。
一方、そうでない時間帯には薬剤を投与しなくてよいわけですから、副作用や合併症を格段に減らすことができます。薬剤が少なくてすむぶんだけ、医療費を抑制することも可能です。
多くの方に「時間治療」の有効性を知っていただき、一刻も早く医療の現場に普及させたいというのも、本記事が書かれた理由の1つです。
時間を考慮した治療がなぜ必要で重要なのか?――その答えを解き明かしていきます。
心臓病や脳血管障害に
なりやすい時間帯はいつ?
タイミングを問わず、突然病気になるものだと考えられていた心臓病が、じつは朝に多いことを世界で初めて明らかにしたのは、アメリカのスモレンスキーとハルバーグでした。1972年のことで、彼らは43万2892例の死亡統計から心臓死が最も多かった時刻を解析し、10時8分に多いことを見出しました。