腫瘍マーカーのリズムに応じて
抗がん剤が「効く曜日」を探す

 腫瘍マーカーにはサーカディアンリズムがあること、その日内変動を調査して、それに応じて投薬時刻を決めると、がん細胞を最も効率よく死滅させることができることを紹介しました。しかし、時間治療の効果を最大限に発揮するためには、さらなる工夫が必要です。腫瘍マーカーには日内変動だけではなく、1週間の変動性もみられることがあるからです。

 たとえば、CA125という腫瘍マーカーの増減には、サーカディアンリズムがあります。ある年の6月12日から7月6日まで、1ヵ月近く連続計測したCA125の変動リズムには、6時ごろにピークを示すサーカディアンリズムが、再現性よく繰り返されていました。

 図6.6は、CA125の増減にはサーカディアンリズムだけでなく、1週間のリズム(サーカセプタンリズム)がみられることを示しています(この例では月曜日が最も高い)。サーカディアンリズムとともに、サーカセプタンリズムを考慮した時間治療がより効果的である可能性を示しています。

図表4:腫瘍マーカーにみられる1週間のリズム図6.6 腫瘍マーカーにみられる1週間のリズム 同書より転載
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 ここでみられるサーカセプタンリズムは、病気のときや加齢とともにしばしば現れるリズム転位(バリアンス・トランスポジション)の例です。サーカディアンリズムの振幅よりもサーカセプタンリズムの振幅のほうが大きくなることもあり、その場合には、サーカディアンリズムによる日内変動よりもサーカセプタンリズムによる1週間の変動に合わせた投薬の工夫=時間治療が必須になります。がんの治療には、抗がん剤に加えて放射線を使ったものがあります。

 放射線照射における時間治療も、抗がん剤と同様の考え方に基づいておこないます。腫瘍マーカーの変動のリズム振幅が、24時間周期よりも1週間(168時間)周期のほうが明らかに大きい場合には、サーカディアンリズムよりもサーカセプタンリズムに合わせた放射線照射の時間治療が有効です。腫瘍マーカーの活性が168時間周期の最大時に放射線を照射すると、最小時に照射するのに比べ、脳腫瘍の治療効果が2倍以上も大きくなったことが報告されています。