また、「食べ放題である」ということも、しゃぶ葉横取り問題に大きく関係していそうである。食べ放題では自分が最終的にどれだけ食べるかが注文時には決定していないし、一皿ごとに値段が定められてもいない。自由でふわっとしているので、食べ放題以外の飲食店と比較すると、自他の皿の境界が曖昧になる隙がある。

 そんな中で自分の注文していた料理がどうやら横取りされたとすればどうか。また注文すればいいし金銭的な損失はないが、時間制限のある食べ放題において時間の損失はやっぱり金銭的な損失に等しくも感じられ、自他の皿の境界も曖昧なことだし、さっき取られたから次取っちゃおうと考えるケースはしばしば起こり得ると考えられる。

 万引きが多い海外では定着が難しいセルフレジが日本ではさして問題なく導入が進んでいるといった話から日本人の品の良さがうかがえるが、その善性に全幅の信頼を寄せるのは危険である。「赤信号みんなでわたればこわくない」という、もはや慣用句となったフレーズに含意されている「悪目立ちしたくない気持ちが強い」という傾向も日本人に見られる性格的特性だから、衆にまぎれればちょっとした悪いことは気にせず全然やれちゃうくらいのポテンシャルはあるのである。

警告音、最終的に人の手、蓋をつける…
配膳ロボを改善するとしたら

 食べ放題は、客が「みんな横取りやってるみたいだし、やられっぱなしじゃ食べ放題の時間を損するばかりだし、私もやっちゃおう」と思い至りやすいシステムだから、「利用客に周知徹底」といった善性に頼る方法ばかりに解決の道を見出さず、横取りが起きにくい・横取りを起こさない仕組みなり仕様なりを用意してあげた方が横取り問題については未来があるように感じられる。

 巷に解決策として出された案には次のようなものがあった。

・1度に複数卓回るのをやめて、効率を犠牲にしてでも1度に回るのは1卓だけにする。
・料理をロボにテーブル手前まで運ばせて、最終的にテーブルに置くのは人間の手で。
・間違った棚に手を伸ばしたら警告音のようなものを鳴らしてはどうか。
・棚に扉や蓋を付けて、目的の卓に到着した時にだけ該当する棚の扉・蓋が開くようにしてはどうか。