一流旅館・加賀屋が配膳ロボ導入の先駆け
そのきっかけは?

 筆者が確認したところ、「配膳ロボ」と呼べる存在は国内で最初のものは、日本一の旅館として名高い加賀屋が1981年に導入したものである。このロボは別に喋らないし笑わないし、料理を「配膳」するというよりは「運搬」という趣きのようだが、2階の調理場から各階の配膳室まで、料理を載せたワゴンがレールに乗って運ぶというものだった。開発は大福機構(現・ダイフク)。その後1989年、天井を走るモノレールがワゴンを吊り下げて運ぶシステムとなり、このときの開発は石川島播磨重工業(現・IHI)であった。

 この配膳ロボの導入のきっかけが「従業員の負担を減らすため」であった。従来であれば旅館の客室に料理を運ぶのは相当重労働だったそうである。考えてみればそれもそのはずで、重い皿を慎重に、調理場と客室を階段を使って何度も行き来しながら運んでいくのである。足や腰を痛め、時として腱鞘炎になりながら痛みと疲れを我慢して客の前に料理を並べていては、本当であればもっとも大切にしたいおもてなしの心が十全に発揮されない。そこで、当時は前例のなかった配膳ロボの導入に踏みきったところ、業務効率のみならず従業員の満足度が向上したそうである。

 この話と「横取り問題」を照らし合わせてみると、時代も業種も問題となっていることも違うので簡単な比較はもちろんできないものの、食べ放題チェーンでも参考にできる部分はありそうである。ロボ導入の目的、加賀屋の場合は「従業員の負担軽減」が一番であった。

 食べ放題・飲み放題チェーンは配膳ロボで、何をもっとも強く目指すのか。

 その希求する方向に配膳ロボットも進化していくはずであり、飲食業の新たなあり方が示されていきそうである。