須藤桂一『マンション住まいの「悩み・トラブル・巣くう悪」』写真はイメージです Photo:PIXTA

マンション業界に激震が走っている。マンションの大規模修繕工事を行う会社約20社に談合の疑いがあるとして、公正取引委員会の調査が入ったのだ。大規模修繕について談合やリベートが横行していたのは業界内では知られていたが、この問題がついに明るみに出たといえる。長年、業界の談合・リベート問題に取り組んできた筆者の視点で、今回の件を考えてみたい。(株式会社シーアイピー代表取締役・一級建築士 須藤桂一)

マンションの大規模修繕工事で持ちあがった
複数の工事会社による「談合」疑惑

 3月4日、複数の報道機関が一斉に「首都圏の分譲マンションの大規模修繕工事で、工事会社約20社が談合を繰り返していた疑いがあるとして、公正取引委員会が独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で立ち入り検査を始めた」と報じた。

 マンションは建物や設備の劣化を防ぎ、長期にわたって維持するために、一般的には十数年程度の周期で大規模修繕工事を実施する。その際、多くのマンション管理組合では管理会社や設計コンサルタント会社に委託し、大規模修繕工事を発注するのだが、その工事をめぐり、業者選定時の見積もり合わせや入札で、事前に話し合って受注業者や工事額を決めていた疑いがあるということだ。

 公正取引委員会は、工事会社らが受注価格の低下を防ぐことや、各社が分担して利益を得ることを目的に、数十年前からこうした受注調整を繰り返しており、それによって工事費が割高になり、管理組合側の過剰な負担につながった可能性があると見ている。

 公正取引委員会がマンションの大規模修繕工事について調査を行うのは初めてのことで、一部報道では、工事会社だけでなく、工事会社の選定に関わった一部の設計コンサルタント会社についても、受注調整に関係していた可能性を視野に調査を進めるという。