公正取引委員会だけでなく
国土交通省も動き出す?
国もこうした動きにまったく気づいていないわけではない。国土交通省は「マンションの大規模修繕工事の発注などにおいて、工事会社の選定に際して、発注者である管理組合の利益と相反する立場に立つ設計コンサルタントが存在する」ことを問題視し、2017年1月に不適切な設計コンサルタントについての注意喚起の通知(国住マ第41号 国土建労第1021号 平成29年1月27日)を発出している。
メディアでも多く取り上げられたこともあり、それ以降は特に目立った動きは見られなくなったが、そうした談合やリベートの行為がなくなったわけではなく、むしろアンダーグラウンドに潜って、さらに手口が巧妙化、エスカレートしただけのことだった。
たとえば、これまでは前述のように、元請け工事会社から紹介手数料やコンサルティング料として受け取っていたリベートを、その下請けや孫請け工事会社から迂回して受け取るようにしたり、あるいは下請け工事会社を指定したり、資材や塗料を指定し、それらの工事会社からリベート分を吸い上げる形に切り替えたりという情報も聞こえてきている。
今回の公正取引委員会による調査は、冒頭で触れたように、工事会社だけでなく、設計コンサルタント会社や管理会社にも及ぶことが予想される。なぜなら、彼らはワンセットで談合の温床となっているからだ。もちろん建設業の許認可を出している国土交通省も黙っていないだろう。公正取引委員会からの調査結果にもよるが、これまで談合で「甘い汁」を吸っていた多くの関連会社に、さまざまなペナルティが科される可能性が高い。
余談となるが、国土交通省の2017年の通知を受けて、談合をしていた設計コンサルタント会社との契約を解除した工事会社もちらほら現れてはいた。もちろん、どの会社も公に「談合から足を洗いました」と言えるものではない。しかし、談合の和から離脱する行為は、大変な英断であったと推察する。
実はマンション業界では、どの工事会社、設計コンサルタント、管理会社が談合やリベートに関係していたという情報は知れ渡っており、公然の秘密ともいえることだった(参考記事)。それが、今回の公正取引委員会の調査によって、ようやく白日の下にさらされることになったのである。