業界の膿を出し切って
マンション業界の正常化につなげたい
筆者は30年ほど前から、この談合・リベート問題と業界改革に取り組んできた。また、この談合・リベートモデルの始まりも見てきた。そうした立場にいる者として、今回調査が入った工事会社約20社には、独占禁止法違反を始め、今後さまざまな形でそれなりのペナルティが科され、これまでの流れが大きく変わり、管理組合にとって最善の発注体制が整うことを強く願う。
今回の報道を受けて、すでに業界は大騒ぎになっている。いろいろな立場からさまざまな話が聞こえてくる中で、「公正取引委員会へ誰がリークしたのか」という、犯人さがしのような声も出ているようだ。筆者はこれまで談合・リベート問題について声高に指摘してきた一人ではあるが、今回の公正取引委員会の動きは筆者の及び知るところではない。大きな力が働いたのかもしれないし、あるいは複数の管理組合からの陳情や情報がもたらされた結果かもしれない。
筆者としては、ただ一筋に今回の調査がきっかけとなり、真にマンション業界が正常化していくこと、つまり管理組合が不当に高い工事費を支払わされることなく、適正な競争原理が働くようになることを願っている。
もちろん、数十年かけてここまで複雑で深刻化してしまったこの談合・リベート問題を解決するためには、少なからず痛みが伴うことも覚悟しなければならないだろう。業界の商慣習の最中において談合・リベートに応じていた工事会社の立場も理解できないことはない。彼らが生き残っていくためには、必要悪の行為だったともいえるからだ。談合・リベートモデルで寡占化されていた業界にあっては、その流れに乗らなければ、工事の見積もりに参加することすらできなかったのだろう。
業界ぐるみの談合による管理組合への影響は、間違いなく「割高な大規模修繕工事を発注せざるを得ないことによる、修繕積立金の値上げ」に結びつく。確かに、昨今のインフレによる建材費や人件費の高騰が原因で、工事見積もり金額が上昇している側面もあるが、それに乗じて、不当に工事費がつり上げられてきたことは間違いない。
正直に言えば、今回の件を受けても、業界にはびこる談合・リベート問題が完全に撲滅され、膿を出し切るというところまではいかないかもしれない。それほど、この闇は深くて暗いのだ(参考記事)。それでも、今回の報道は業界に大きなインパクトを与えたことは確かである。
まずは公正取引委員会や国土交通省の今後の動きを注視していくとともに、今回の件をきっかけにマンション業界がクリーンな業界に生まれ変わり、それが管理組合とマンション住民の利益と幸せにつながることを大いに期待したい。