独占禁止法違反となれば
どういう処分を受けることになるのか

 独占禁止法は、自由経済社会において、公正かつ自由な競争を促進し、事業者が自主的な判断で自由に経済活動を営める状態を創出し、一般消費者の利益を確保するとともに、国民経済の健全な発展を促進することを目的として、企業が守るべきルールを定めている法律である。

 今回、公正取引委員会が疑っているのは、独占禁止法第3条で禁止されている「不当な取引制限」に対する違反で、「カルテル」に当たる行為だと思われる。カルテルは、事業者や業界団体の構成事業者が相互に連絡を取り合って、本来各事業者が自主的に決めるべき商品の価格、生産・販売数量などを共同で取り決める行為を指す。簡単にいうならば、企業同士が競争をせずに、価格を引き上げたり、リベートや割り戻しなどの密約を交わすこと、いわゆる“談合”があったのではないかと疑っているのだ※。

※なお、本来、談合(入札談合)はカルテルとは対象とする行為が違うものだが、今回の記事では、企業が不当に相談して価格を調整している行為を指すものとして、便宜上「談合」という言葉を用いている。

 今回の調査により、工事会社らの行為が独占禁止法違反に該当する場合、違反行為を速やかに排除するように命ずる「排除措置命令」や、違反行為の売り上げに応じて国庫に課徴金を納める「課徴金納付命令」といった行政処分の対象になる。

 刑事処分としては、ケースや違反行為によって異なるが、私的独占や不当な取引制限などに対して、法人は「5億円以下の罰金」(独占禁止法第95条)、個人は「5年以下の懲役または500万円以下の罰金」(独占禁止法第89条1項1号)が科せられる可能性がある。加えて、建設業は許認可事業でもあるため、国土交通省からは営業停止命令や公共工事入札の制限などの処分を受けることもあるだろう。

マンション業界に蔓延している
談合・リベートのからくり

 長年にわたり見聞きした話から、大規模修繕工事をめぐる談合やリベートの授受は、おおむね次のような形で行われる。

 まず、工事を希望する管理組合に対して、設計コンサルタント会社が、時には異常とも思えるほどの安い金額でコンサルタント費用の見積もりを提出し、大規模修繕工事のコンサルタント業務を受託する。

 次に、最終的に工事を発注する工事会社を1社決定し、この「チャンピオン会社」と設計コンサルタント会社が結託して、工事見積もりのコントロールと工事費のつり上げ、厳しい公募条件をつけた上での見せかけの入札を行い、結果としてチャンピオン会社が工事を受注する。こうして工事をチャンピオン会社が受注したあかつきには、設計コンサルタント会社に工事費の何パーセントかをリベートとして支払うシナリオとなる。この場合、リベートは紹介手数料、コンサルティング料、マーケティング料など、名目はさまざまだ。

 しかも、それらはすべて管理組合が負担する工事費に含まれている。管理組合は知らぬ間に大きな負担(損害)を被っている、というからくりになっているわけだ。