舞台芸術制作者の塚口麻里子さんは、国内外の舞台芸術制作者と有機的なネットワークを構築し、制作者やアートマネージャー相互の協働を促進する環境整備を行い、契約やハラスメントを含む創作環境に関わる勉強会等を実施しています。

 手話通訳士の健康問題に長く取り組んでいる団体もあるなかで、NPO法人シアター・アクセシビリティ・ネットワークは観劇サポートの推進に取り組んでいます。理事長の廣川麻子さんは、手話通訳士や字幕制作者などの、観劇サポートに従事する人たちの適切な労働環境の構築を目指しています。

事故が起きてからでは遅い
メンタルケアが命を守る

 照明スタッフの岩城保さんは経験上メンタルのバランスが悪くなると事故が起こりやすいと考えて日ごろからメンタルケアを推奨しているそうです。

 大道芸人でスプレーアートをしている高見沢克さんは、前泊や後泊をして、移動時の事故防止をしています。

 大道芸フェスティバルの制作プロデューサーの猪原健さんは、出演者の労災保険の加入を確認し、インターバルを確保できるタイムスケジュールを組んでいます。

 舞台監督の森下紀彦さんは仲間の同業者と?がって芸能従事者の安全を考える会を作り、危険な作業が多い大道具スタッフと労災保険とメンタルケアの勉強会を東京・下北沢の劇場で開催しました。

 私たちは俳優として、厚労省の事故防止対策の通知をもとに俳優向けのガイドラインを作成しました。心の負荷の大きい役を演じる場合、撮影の前後にカウンセリングを受けることを推奨しています。

 以上のように、当事者ならではの必要に応じた対策をしています。

 労災制度ができたばかりで、まだ安全対策をしていない団体があるかもしれません。しかし私たちの団体に集まった人が、心底安全を願って自主的に対策を講じていることは素晴らしいと思います。

 もしかしたらご自身か仲間が事故に遭うなどの経験があったせいかもしれません。それはとても悲しいことですが、これ以上労災があってはならないという強い決意が生まれます。その思いを仲間と共有して安全の実現に向かうことはこの上なく尊いことだと思います。