フリーランス法で
待遇の改善が大きく前進
定期的に開催している労災の勉強会でファシリテーターを務める舞台俳優の山内健司さんは、「こうして同じ仕事をしている人が集まって安全のことを考えるのは本当にいい時間ですね。みなさん今日もありがとうございます」と毎回おっしゃっています。
私もこうして当事者である芸能従事者が関心を持って話を聞いてくださるとき、労災保険ができてよかったと、涙が出るほど嬉しいです。

フリーランスには様々な業種があるため、そもそも労災に関心が薄い人も多いだろうと思います。また、年配の芸能関係者のなかには国の世話にはなりたくないという方もいます。そのような中、幸い私は、芸能従事者の辛い歴史を深く知って共感して助けてくれる方との出会いに恵まれました。それは官僚の方もいれば、学者の方もいました。垣根をこえた皆さんが、一日も早く1人でも多くの人が助かるようにと、同じ思いで尽力してきました。こうしてできたのが、芸能従事者の特別加入労災保険だったのです。
また、2021年に芸能が「特定作業従事者」と認められた後、2022年には厚労省が個人事業者等の安全衛生対策のあり方の検討会を始めました。その報告書では、フリーランスに発注する人を「特定注文者」と名づけています。2024年に施行されたフリーランス法では、フリーランスではなく「特定受託事業者」としています。
つまり特定作業従事者は、雇用類似・個人事業者・フリーランスとして働く人を「特定」と冠する名称の先駆けになったと言えると思います。
この動きはこれまで法律の網から抜け落ちて泣き寝入りするしかなかったフリーランスの地位の向上と待遇の改善に大いに寄与したのではないかと考えています。