太閤秀吉による大改造から
進歩していない京都の都市構造

 京都御所は安倍内閣の時から常時公開になったが、御苑内の整備を進めて、もっと魅力的な大型観光ゾーンにできる。その際、地下鉄駅に近い所に観光客を集中させるのが、道路の混雑を避ける最良の策だ。

 かつて、先斗町の三条と四条の間の鴨川に、パリ市長時代のシラク元大統領が日仏友好の象徴となる歩道橋を提案したが、「フランス橋は京都に似合わない」などといって阻止された(先斗町の客が鴨川の東側の祇園に逃げると心配したともいわれる)。

 ところが、完成予想写真を見せてアンケートを取ると大人気で、もし完成していれば、鴨川で最も美しい橋になっただろうし、景観破壊との声は言いがかりだったと思う。いずれにせよ、現在の先斗町・木屋町界隈の防災は脆弱(ぜいじゃく)だし、混雑も深刻だ。もうひとつの渋滞箇所である嵐山も、渡月橋の下流に橋を架けたらかなりの問題が解決するはずだ。

 京都は道路の新設や拡幅から逃げてきた。道路建設は面倒だが都市機能の充実には不可欠だ。京都の都市構造は太閤秀吉による大改造から進歩していない。たとえば、八坂神社の前を通る東大路通でも拡幅が部分的で、幅が広くなったり狭くなったりするのは怠惰の象徴だ。

「路面電車を残しておけば良かった」と多くの人が言うが、そのためには、道路の拡幅が必要だ。文化財があるから拡幅できないというが、そもそも京都の大きな通りには、拡幅で動かせない文化財など何もない。また、高速道路が京都駅のかなり南で止まっているのも、市内北部から市外へ出にくくしている。

 京都駅への一極集中も問題だ。これは、京都駅が市中心部の南側にあって、北と東は山なので通り抜けができない構造のせいでもあるが、近鉄特急を地下鉄南北線に乗り入れさせることも自動列車停止装置(ATS)の改良だけでできるとも聞く。

 ただ、今後大きく期待できそうなのは、現在、京都駅が終点になっている関空特急はるかを山科駅始発に改める工事が今年始まることだ。完成すれば、関空から京都への玄関が京都駅と山科駅の2つになるし、関空特急と京都駅ホームを共用している嵐山へ行く嵯峨野線の能力アップが期待できる。そういう工夫を加速して積み上げていくことで、現在程度の問題は解決できると思う。

(評論家 八幡和郎)