今週のキーワード 真壁昭夫Photo:Kevin Frayer/gettyimages

中国政府が5000億元(約10兆円)の国債を発行し、国有大手銀行に公的資金を注入する。住宅価格は下落基調でデフレ圧力が強い中、不動産バブルの後始末を本格化させる。ただし、公式統計では不良債権残高は約3兆元(約60兆円)だが、実態は統計以上と推計され、国際機関は、「中国の隠れ債務は60兆元(約1200兆円)に達する」と推計。今回の規模は十分とは言い難い。日本も「失われた30年」を経験したが、本格的な景気回復に欠かせない要素は何か。(多摩大学特別招聘教授 真壁昭夫)

中国が約10兆円の国債で公的資金注入へ

 中国の全国人民代表大会(全人代、わが国の国会に相当)で、李強首相が「本年の実質GDP(国内総生産)成長率目標を5%前後」と明言した。また、政府は5000億元(約10兆円)の国債を発行し、国有大手銀行に公的資金(資本)を注入する。

 中国政府はようやく、公的資金を使って不動産関係の不良債権処理に着手し始めるようだ。それに伴い、3月5日の発表後、香港株式市場では不動産株が上昇した。

 今後、注視すべきは、中国経済の本格的な回復が進むかである。不良債権処理が進めば、経済が成長軌道に回帰する可能性はあるだろう。ただ、中国の不動産価格は依然として下落基調が続いているのが気がかりだ。不良債権の処理には時間がかかるだろう。2月の中国の消費者物価指数は前年同月比0.7%下落し、デフレ圧力は高まっている。

 また、米国との貿易摩擦や、地方政府の財政悪化、自動車や鉄鋼に代表される過剰供給問題は簡単に解決できるものではない。人口減少や少子高齢化も、経済の重荷になる。AI(人工知能)分野など、明るい材料もあり一部投資家が中国株式への投資を再開する動きはあるものの、中国経済が本格的な回復するかはまだ不透明だ。