不適切コンテンツはシャットアウト不可能
親として考えるべきことは?

 じゃあそこから守るためにはどうするべきかと考えたとき、わが子に「決してよその子から動画を見せてもらってはいけません」と教えるのか。子どものコミュニケーションを厳し目に制限することは子どもの健全な発達につながるのか。Aを見せるのとどちらがプラスでマイナスか――などなど、今度は「さじ加減」という難しい問題に新たに直面する。

 そもそもなぜ残虐な表現が子どもによくないとされているのかというと、そうしたコンテンツが子どもの暴力性を誘発するといったことが研究によって指摘されているからである。特に幼い子ほど現実と2次元創作物を混同して捉えがちなので、尋常ならざる恐怖を持ってしまうおそれがある。

 では、不適切コンテンツは完全に防ぎきれず、子どもがある程度それにさらされることを前提にして、あらかじめ子どもに考え方の指針や逃げ道を教えておくのは賢明な選択肢のひとつであるように思う。

「家族で映画Pedia」というサイトでは、そうした知見を元に「子どもにどのように声掛けしたらよいか」をいくつか例示している。臨床的な成果が確認されていないものもあるが、どれも実践的で効果的に思える。

 いくつか試した方法の中で実際効果があったと感じた方法をいくつかシェアしておく。

 まず、ホラーやグロなどの恐怖系コンテンツについてだが、子どもの恐怖を親が鼻で笑ったり否定するだけだと子どもの気持ちの行き場がなくなってしまうので、ある程度共感してやると子どもも落ち着くようである。こわがっている子には「こわかったね。どの辺が一番がこわかった?」と尋ね、自分の言葉で説明するように促してみるのがよろしかろう。

 これは臨床心理学発祥の用語でいう「自己開示」 というもので、心の浄化作用がある。また、自分の言葉で説明することで自分への理解が進み、恐怖が薄れることもある。

 一方的に聞くだけでなく、視聴したものについて感想を言い合ったり深堀りしていくのもいい。これは2人だけでなく、3人以上で行うのも効果的である。

 次に、不適切なコンテンツについて。わが家ではYouTubeはほぼリビングのテレビで観せている。視聴するコンテンツをほぼ完全に監視下におけるので、わりと最強のペアレンタルコントロールである。

 親目線で不適切と感じる動画が流れた際は、すぐに観るのをやめさせるのではなく、どこが不適切でなぜ観てほしくないのかを、実際の動画を通して実地で教えることが可能である。親は不適切コンテンツの視聴を通して子どもに自分の感覚をシェアすることができ、子ども自身の判断基準の形成に(少なくとも親目線では)ポジティブな影響を与えるはずである。

 子どもへの声掛けや、不適切コンテンツの扱いに迷った際の一助となれば幸いである。

 子どもが触れるコンテンツをフィルタリング機能でふるいにかけるのと並行して、こうした事前の声掛けで、子どもが過激なコンテンツから被るデメリットを極力少なく抑えることができるはずである。

 親目線で「子どもに不適切」と感じるコンテンツは実はなかなか流動的である。だから、その種の問題で思い悩むことのある保護者に、必要以上に思い悩まされる必要はないと伝えておこう。「不適切コンテンツ」が定義の変わりやすいふわふわしたものである以上、あまり真剣にやるのは雲と取っ組み合いをするようなものである。

 保護者は日頃から折に触れて、自分が大切だと思うことをきちんと子どもに伝えていけば、その影響は不適切コンテンツから受けるものよりも強く現れるはずである。