見逃せない天龍寺塔頭2カ寺の特別公開

弘源寺(右京区)本堂の襖絵。向かって左側の襖には、嵯峨野の名所色紙が張られている弘源寺(右京区)本堂の襖絵。向かって左側の襖には、嵯峨野の名所色紙が張られている 写真提供:弘源寺

 嵐電の終点「嵐山」駅から天龍寺の総門をくぐってすぐ、放生池の向かいに山門を構える弘源寺へ。いまから600年近く前、室町幕府の管領である細川持之が、天龍寺の初代住職・夢窓国師の孫弟子に当たる玉岫禅師を迎えて創建した塔頭(たっちゅう)寺院で、5月18日(日)まで特別公開中です。

 弘法大師空海の直筆と伝わる扁額を掲げた毘沙門天堂の毘沙門天立像(国指定重要文化財)、嵐山を借景とした枯山水庭園「虎嘯(こしょう)の庭」、蛤御門の変の前に天龍寺に陣を張った長州藩が試し切りのためにつけた刀傷などが見どころとなります。

 毘沙門天堂の天井を彩る四季草花48面の絵画、近代日本画の巨匠・竹内栖鳳の弟子たち24人が描いた扇面貼交屏風、本堂襖絵など、堂内で眺められる日本画の数々も魅力。絵画を通して風趣に富んだ四季の花々をめでることもできるのです。竹内栖鳳自身の筆による猫の絵もお見逃しなく。

 続いて天龍寺境内の南側で、6月30日(月)まで特別公開となる同じく天龍寺塔頭「宝厳院」へ。弘源寺と共通の拝観券を求めておけば200円お得です。いちばんの見どころは、江戸時代のガイドブック『都林泉名勝図会』でも紹介された回遊式庭園「獅子吼(ししく)の庭」。「獅子吼」とは、仏様の説法を意味するそうで、伏して前方を見据えたりりしい獅子の姿を彷彿とさせる巨石「獅子岩」がシンボルです。

 数は多くありませんが、お庭にはしだれ桜の木も。小柴垣の苑路を歩きながら、鹿おどしや小さなせせらぎの透き通る音に耳を傾けたり、みずみずしい苔を眺めたり、うららかな陽光の下でそぞろ歩きを楽しみましょう。茶庵では、縁側や赤い番傘の下の床几台に腰掛けてお抹茶とお菓子も味わえますよ。

雄大な嵐山を借景に、奥ゆきが感じられる弘源寺の「虎嘯の庭」雄大な嵐山を借景に、奥ゆきが感じられる弘源寺の「虎嘯の庭」 写真提供:弘源寺