サウスウエストは真っ先に除外された。保有する数百機を全て737シリーズにそろえて運航や整備を効率化しており、エアバスへの切り替えは望めなかった。サウスウエストはその後、737MAXを開発前段階で大量発注して商品化を後押しする「ローンチカスタマー」となる。

 デルタとユナイテッドも、望み薄とされた。デルタは新しいエンジンを積んだ航空機の最初の顧客になるのをいやがっており、ユナイテッドは当時の経営陣の多くがボーイングびいきの旧コンチネンタル航空出身者で占められていたからだ。

狙われたアメリカンの
ひっぱくする台所事情

 残るアメリカンは追い詰められていた。米同時多発テロやリーマン・ショック後の航空不況のさなかでも、大手のレガシーキャリアでは唯一、連邦破産法の適用を免れていた。

 しかし、それがゆえに高い賃金水準と膨らんだ負債をキャンセルする機会を逸し、高コスト体質に悩まされていた。燃料をガブ飲みする古い機体の更新も進んでおらず、筋肉質な経営への転換が急務となっていた。新型機をまとめて売り込むにはうってつけだ。

 リーヒたちの照準は、アメリカンに合わせられた。2001年に起きたアメリカンのエアバス機墜落事故の原因などをめぐり、アメリカンとエアバスには互いに感情的なしこりが残っていた。しかし、エアバス側は関係修復をはかる。リーヒの思惑通り、アメリカンがエアバス機の導入に動いたことに狼狽したボーイング。CEOのマックナーニら経営陣は「737シリーズの改良でしのぐ」という、エアバスが差し向けた道を自ら選んだ。

 ボーイング、エアバス両社からの小型機大量購入を発表した2011年7月のアメリカンのプレスリリースは、のちに737MAXとなる機材をこんな文言で紹介していた。

 アメリカンは、ボーイングで開発が見込まれている、現行モデルよりもさらに顕著に燃費性能に優れたエンジンを搭載した737NGの進化型を、100機発注することも計画している。アメリカンは、ボーイングの新たな737ファミリーにコミットする最初のエアラインになることをうれしく思う。(中略)この飛行機はCFMインターナショナルのLEAPエンジンによって飛ぶことになるであろう。

 この時点ですでに、737MAXの基本コンセプトは固まっていたわけだ。アメリカンからの受注を逃すまいと焦るあまり、ボーイングが踏み切った「ショートカット」が取り返しのつかない禍根を残す。