トランプ政権「多様性の推進」撤廃、エリートがつくった理想社会に反動【池上彰・増田ユリヤ】米グーグル(写真)や米メタなどのIT大手を含め、米国でDEIへの取り組みを撤廃あるいは縮小する企業が増えている Photo:Anadolu/gettyimages

トランプ大統領
「多様性の推進」を全面廃止

池上 第2次トランプ政権の始動から2カ月ほどたちました。日々驚きの連続で、日本の国際ニュースも「トランプ一色」です。

増田 就任初日の1月20日に40本以上の大統領令などに署名したのを皮切りに、思わず絶句するような政策に次々と着手しています。

 内政で言えば、例えば「性別は男女のみとする」という大統領令。米国ではこれまで、パスポートの表記などで「M(男性)」「F(女性)」「X(どちらでもない、答えない)」の三つの表記が存在しましたが、Xは廃止されます。

池上 こうした方針は支持者向けの人気取りでしょう。DEIプログラムの見直しなども同様です。

増田 Diversity(多様性)、Equity(公平性)、Inclusion(包摂性)を尊重するDEIの枠組みでは、さまざまな観点で少数者とされる人たちを優遇する仕組みが政府や企業で推進されてきました。ところが、トランプ大統領がDEIを全面的に廃止する大統領令に署名したことで、政府職員はもちろん、各企業も対応を迫られることになりました。

池上 政府のDEI関連部署の職員は強制的に有給休暇を取らされています。グーグルやメタなどIT大手はそれぞれDEIの撤回や縮小方針を公表。小売り大手のウォルマートやファストフード大手のマクドナルドもすでにDEI撤廃を打ち出しています。

増田 トランプ氏の論理では「本来、純粋な競争をすれば勝てたはずの優秀な人たちが、少数者優遇のために割を食ってきた。だから廃止する」というものでしょう。