
DEI撤廃や公務員大量解雇
論争の問題、あえて法廷闘争に!?
トランプ大統領は、就任後1カ月余りで、対中関税の引き上げや不法移民の強制送還開始など、公約である米国第一主義を推し進める政策はもちろん、連邦補助金の執行を一時停止したり、公務員の大量解雇を発表したりするなど、政府のあり方を根本から変えようとする取り組みを猛烈なスピードで進めている。
政府効率化省(DOGE)がけん引する行財政改革では、DEI(多様性、公平性、包摂性)に関する政策が大幅に削減され、その担当者が解雇されるなど、トランプ大統領の方針と相いれない部署などを中心に大ナタが振るわれている。
対外援助を管轄し、かねて米国第一主義の目の敵にされてきた米国際開発局(USAID)が大量解雇などで閉鎖状態に追い込まれたのを皮切りに、これまで聖域と見なされがちだった国防総省ですら、2月21日には、米軍制服組のトップであるブラウン統合参謀本部議長や女性初の海軍制服組トップのフランチェッティ作戦部長らが更迭され、5000人を超える人員整理の方針が明らかにされている。
DOGEを率いる実業家のマスク氏は、2月20日に開かれた保守派の集会である「保守政治行動会議(CPAC)」に登壇し、アルゼンチンのミレイ大統領から贈られたチェーンソーを振りかざしてみせた。
トランプ氏を止めるのは誰なのか。その候補の一つとなる議会は現状では歯止め役から程遠い。第2次トランプ政権の閣僚の指名承認でも、司法長官に指名されたゲーツ氏が辞退に追い込まれただけで、ワクチン懐疑派として物議を醸してきた厚生長官のケネディ・ジュニア氏をはじめ、問題含みの人事がことごとく承認されている。
三権分立の仕組みを取る米国では、議会によるチェックが利かないのであれば、第2次トランプ政権に「待った」をかける役割は司法に託されるが、その頂点に立つ最高裁判所では、トランプ氏と考えが近い保守派の判事が主導権を握っている。
第2次トランプ政権には、保守派が主導権を握る最高裁での勝利を期待して、あえて論争的な政策を法廷闘争に持ち込もうとする気配すら感じられる。
司法は「最後の砦」となれるのか。