「事実質問」とクローズドクエスチョンの決定的な違い
結論から言ってしまうと、この質問は、「思い込み質問」です。
さらに具体的に考えてみましょう。「最近よく眠れてますか?」に対しての返答は「はい」か「いいえ」にまずは絞られますね。これも一見、答えが一意に絞られる事実質問に見えますが、実はこの質問には重大な問題点があります。
それは、「よく眠れていますか?」の「”よく”」の部分です。
たとえば先ほどの質問に対して、「よく眠れています」という答えが返ってきたとしましょう。しかし実は睡眠時間を詳しく聞いてみると、「4時間」だったとしたらどうでしょうか。日本人の睡眠時間の平均よりは低くなりますよね。
あなたがもし質問者であれば、(人によると思いますが)、だいたい6時間~8時間とかを想像した人が多かったのではないでしょうか。実際世の中には、睡眠時間4時間で「よく眠れた」と感じる人もいますし、「10時間ないと足りない」という人もいますよね。つまり、実際に回答者が「よく眠れている」と感じているとしても、質問者側が事前にイメージしていた「よく眠れている」姿とは、ズレている可能性があるのです。ちなみに同じ理由で「最近」のほうもNGです。
このような、「”よく”」などの「一般化された表現」の入っている質問は、質問者と回答者の間で、解釈のずれを引き起こします。クローズドクエスチョンの体裁をとっていても、事実質問にはなっていないのです。
こういった場合は、「昨日は何時間寝ましたか?」「一昨日は?」のように、答えが一意に絞られる質問=事実質問に言い換えれば、解釈のズレは起きません。
「事実質問」で解釈のズレを未然に防ぐ
本書で詳しく解説しますが、このような「思い込み質問」がダメなのは、第一に相手の「思い込み」を引き出し、「解釈のズレ」を生じさせてしまうからです。
このような質問を使ってしまうと、質問者と回答者の間に「会話のズレ」が起こります。そして、これに気づかずに話を進めてしまったときに発生するのが「会話のねじれ」です。この聞く側と聞かれる側の間に生じる「ねじれ」こそがコミュニケーション不全の正体です。そして実は、「なぜ質問」は、このねじれを引き起こす最も「たちの悪い」質問なのです。
賢い人は、事実に絞って質問をします。こういった場合は、「いつ」「どこ」「だれ」などの、5W1H(ただしWhyとHowは除く)を使って、事実に絞って具体的に質問する「事実質問術」を使います。「事実質問術」は、すべての「思い込み質問」に、解決策を提示するのです。
(本記事は『「良い質問」を40年磨き続けた対話のプロがたどり着いた「なぜ」と聞かない質問術』の一部を抜粋・調整・加筆した原稿です)