「なんであんな言い方するの?」「こっちだって黙ってないからな」職場で、家庭で、SNSで――誰かにカチンとくる瞬間は、日常にあふれている。でもそのたびに“やり返す”という選択をしていたら、気づかぬうちに、あなたの心はすり減っていく。「やり返さないと気が済まない」そんな“仕返し脳”こそが、人生を静かにむしばんでいるのかもしれない。
アメリカでベストセラーとなり、多くの絶賛の声を集めた『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』がついに日本に上陸した。著者のブラッド・スタルバーグはマッキンゼー出身で、ウェルビーイング研究の第一人者。本書で語られるのは、変化の激しい時代にこそ必要な「感情との付き合い方」だ。本記事ではそのエッセンスをもとに、“仕返し脳”に陥らず、自分の軸で生きるヒントを解説する。(構成/ダイヤモンド社書籍編集局)

「反応」と「対応」の違い
スタルバーグは、私たちの行動を2つに分けて議論している。
それが「反応」と「(自発的な)対応」だ。
反応とは、よく考えもせずについ早まって出てしまう行動だ。反応すると、型どおりの行動に出やすい。
他方で、自発的な対応は計算したうえで意図的に行動することだ。
──『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より
例えば、誰かに嫌なことを言われた時に、「は? 何それ」と即座に言い返してしまうのは“反応”。一呼吸おいて「この人、何かあったのかな?」と冷静に受け止め、落ち着いて返すのが“対応”だ。
“仕返し脳”の人は、反応だけで生きてしまっている。怒りを爆発させては後悔し、また誰かに怒りをぶつける。その繰り返しだ。
けれどそれは「自分の感情を、相手にコントロールされている状態」なのだ。

「自分に集中する」という選択
コントロールできないものとコントロールできるものを区別しよう。コントロールできるものに集中しよう。
コントロールできないもののために時間やエネルギーを浪費してはいけない。
──『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より
他人の言動や態度は、自分ではどうにもできない。それなのに、そこに怒りを向けて“やり返す”という選択をするのは、無駄なエネルギーを垂れ流しているのと同じだ。
本当にコントロールできるのは、自分が「どう感じるか」「どう行動するか」。
誰かの言葉に一日中イライラするより、自分の時間や感情を“もっと価値のあるもの”のために使うほうが、ずっと建設的だ。
感情に引き金を引かせない
自分がどんな状態の時に反応しやすくなるかも考えてみるといいだろう。
ソーシャルメディアに何時間も費やすと短気になりやすい?
特定のテレビ番組を見ている時?
やるべきことが多すぎて、自分のための時間も余裕もない時?
反応を引き起こすきっかけが判明したら、それを取り除くか、少なくともそれに触れる機会を最小限にとどめよう。
──『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』より
怒りや反応は、たいてい疲れている時に出てくる。寝不足、ストレス、忙しさで頭がパンパン……そんな時、私たちは無意識に「反応的な人」になってしまう。
つまり“仕返し脳”の裏には、生活リズムの乱れや、心の余裕のなさが潜んでいることが多い。
自分が反応しやすくなるタイミングに気づき、その“引き金”をなるべく遠ざけること。それだけでも、無駄な怒りに巻き込まれにくくなる。
怒りや憎しみの感情は自然なものだ。だが、その感情に振り回されて人生を消耗するか、それとも自分の軸で行動するか。それを選ぶのは、いつだって自分自身なのだ。
※本稿は『Master of Change 変わりつづける人:最新研究が実証する最強の生存戦略』の内容を一部抜粋・編集したものです。