2023年8月のある早朝、木々に覆われたシアトル郊外にあるローマン・ストーム氏(35)の自宅に連邦捜査官が押し入り、銃を向けて同氏を逮捕した。このソフトウエア開発者は今夏、暗号資産(仮想通貨)支持派が「ブロックチェーン技術の法的扱いを巡る重要な試金石」と考える裁判で、被告人となる予定だ。暗号資産業界はストーム氏を支持しており、一部の支援者はドナルド・トランプ米大統領に介入を求め、バイデン前政権が提起したこの訴訟を取り下げるよう要請している。ストーム氏をはじめとする3人の開発者は、デジタル資金の移動経路を不明瞭にする「ミキサー」であるトルネード・キャッシュを共同で設立した。その目的は金融プライバシーの確保にあったと同氏は言う。例えば、同社のサービスを利用すれば、戦争で荒廃したウクライナを支援するために暗号資産を寄付しても、ロシア当局ににらまれずに済む。