車両テスターとして約40年のキャリアがあるショーン・オマリーさんは、これまで数百台の車を運転してきた。だが数年前のある日、韓国・現代自動車のスポーツタイプ多目的車(SUV)「IONIQ5(アイオニック5)」の運転席で、車を動かす方法が分からず途方に暮れた。米国道路安全保険協会(IIHS)のシニアテストコーディネーターを務めるオマリーさんと同僚らは、IONIQ5のシフトレバーを見つけられなかった。ようやく1人が、ハンドルの後ろに隠れていることに気付いた。「どこにあるのか全く分からなかった」とオマリーさんは言う。自動車購入者やレンタカー利用者、ホテルなどの駐車係は、オマリーさんの苦労を実感している。電子制御の普及により、自動車エンジニアはシフトレバーとトランスミッションを機械的に接続する必要がほぼなくなった。ステアリングコラムやセンターコンソールに通常取り付けられていた、おなじみの大型シフトレバーが姿を消しつつある。