体重計に乗り頭をかかえる女性写真はイメージです Photo:PIXTA

「ヒ素」は削減すべき汚染物質の代表格だ。われわれ日本人が「健康的」な食材とするヒジキは、毒性の高い無機ヒ素の含有量が多いため、海外では発売が禁止されているという。薬学博士である著者は、いわゆる「健康食品」こそが健康への有害影響リスクが高く、特に「体重が減る」効果を謳ったサプリメントは、摂取してはいけない「ただの毒」だと警鐘を鳴らす。本稿は、畝山智香子『サプリメントの不都合な真実』(筑摩書房)の一部を抜粋・編集したものです。

ご飯と魚が“毒”になる?
ヒ素リスクにさらされる食卓

 最近、欧米で最もリスク管理の優先順位が高く、削減する必要があるとみなされている汚染物質の代表がヒ素です。ヒ素は広く自然界に存在し、古くから知られた有害元素です。生物に対して毒性があるため、古くからその化合物は防腐剤や殺鼠剤、医薬品としても利用されてきました。

 一般的に無機化合物のほうが有機化合物より毒性が高いとされています。無機ヒ素の低濃度慢性ばく露(編集部注/有害物質を低濃度で長期間にわたって体内に取り込むこと)による健康被害としては、皮膚障害やがんが報告されていて、無機ヒ素はヒトでの発がん性が確認されている遺伝毒性発がん物質です。

 子どもでのばく露は、認知機能の発達にも悪影響があるとされます。大量摂取による急性中毒は、吐き気や下痢、おう吐などで、死亡することもあります。

 日本では、1955年に森永ヒ素ミルク事件、1998年に和歌山カレーヒ素混入事件がありました。

 地下水のヒ素濃度が高い地域は世界中に存在していて、ヒ素を含む水を飲料水にしたことによる健康被害が数多く報告されています。ヒ素のばく露源として世界的に重要なのは水ですが、日本では、水道水を使用している場合にはヒ素濃度は低く管理されているので心配はありません。