F社労士のアドバイスを受けたA社長とB部長は、Cに対して入社祝い金の返還を求めず退職扱いとした。入社祝い金の支給条件は「入社時に3万円、3カ月後の試用期間満了時に7万円、入社後6カ月間の在籍で10万円を支給する」に改め、就業規則にも明記した。当初の30万円より減額した分、入社初年度の賞与額をアップするなどの処遇改善を盛り込んだ。

1週間の新入社員研修終了後、Dは生産管理課、Eは営業課に配属されたが、B部長がそれぞれの担当課長と業務指導担当の主任に対して的確な指導とフォローアップを行うよう指示したことで2人とも貴重な戦力になりつつある。そして入社祝い金の税務は顧問税理士に相談し、処理することにした。
4月上旬、さらに2名の中途若手社員が入社しひとまず安心したA社長の元に、乙社長から電話があった。
「もしもし、どうしたの?」
「どうもこうもないよ。最近入社した社員が入社祝い金を支給した翌日に会社を辞めたんだ。ショックだよ。今までなかったことだから……」
「ウチもそれ、やられたよ」
「そうなのか。もしかしたら同じ人かもしれないな」
「どうだろうね。これ以上乙社長には話せないし聞かないってところかな」
電話を切ると、A社長はふぅと息をついた。「たぶん、乙社を退職したのはCだろう。だとしたら乙社は関連企業が多いから、これから地域での就活は前途多難になるだろうが、仕方ないな」
Cに対するもやもやした気持ちが晴れたA社長だった。
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