コロナ禍により主流となったオンライン採用。もはや一度も会わずに内定を出すことも珍しくない。メリットがある一方、会社を一度も訪れていない学生には帰属意識が湧きにくく「内定辞退」が多発するケースも。特集『新しいマネジメントの教科書』(全18回)の#12では、人事担当者だけでなく現場の社員も使える“オンライン採用で知っておくべき3つのコツ”を徹底的に解説する。(ダイヤモンド編集部 塙 花梨)
メリットだらけのオンライン採用
「応募者数が倍になった!」と喜びの声
新卒採用は現状、売り手市場が続いている。もちろん職種や業種によってばらつきはあり、特に理系採用やエンジニア採用は引く手あまただ。コロナ禍の現状に適した採用戦略を練らなければ、質の高い人材を獲得することはできない状況となっている。
今年度の新卒採用は、新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言とタイミングが重なったせいもあり、多くの企業がオンライン採用を経験した。中には、最終選考までオンラインを使用し、一度も会わずに内定を出すケースもあったほどだ。
最近のオンライン採用の具体的な流れは以下の通りだ。
オンライン採用の選考方法
オンライン会社説明会を開催
(説明会の後半で少人数のグループに分け、社員がホストとなって個別の質問を受け付ける)
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正式エントリー開始
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エントリーシート提出、録画面接
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オンライン面接1~4回
(面接の間にフォローアップ面談を行う)
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内定
ここで記載されている録画面接とは、応募者が1~2分ほどの自己PR動画を作成し、それもエントリーシートの代わりとして選考する方法のこと。文字だけでは読み取れない応募者の人となりを判断できるとして、現在300社以上の企業が活用している。
応募者側のメリットも大きい。動画ならPRできる内容の自由度が高く、いつでも撮り直しが可能だ。また、世代的にも自撮りや動画編集に慣れている人が多く、抵抗がないのだ。
このような、オンラインならではの特徴を使いこなせている企業は、その恩恵を受けている。
サイバーエージェント専務執行役員の石田裕子氏は「地方の学生からのエントリーが急激に増え、応募者数が例年の2倍以上になった」と喜びの声を上げた。
また、内定までオンラインで行ったユニリーバ・ジャパンのCHRO(最高人事責任者)である島田由香氏も「やってみるまで『リアルの方がいい』という固定観念があったが、実際にオンライン説明会を開いたら、1800人もの参加者が。質問もたくさん来てうれしい誤算だった」と言う。
さらに、コロナ禍前から一部オンライン面接を取り入れていたUSEN-NEXT HOLDINGSでは、全てオンラインに切り替えたことにより「面接官のスケジューリングが楽になった」(執行役員、コーポレート統括部長の住谷猛氏)という。
このように、うまく使えば応募者数はオンラインの方が断然多くなり、コストや手間は削減される。オンライン採用は、応募者にとっても企業にとってもメリットだらけだといえる。
しかし、オンライン採用には、選考を進めたその先に大きな落とし穴があった――。なんと、応募者数だけではなく、内定辞退者数も増加傾向にあるのだ。
MyReferが2021年卒業予定の就活生628人に対して実施したアンケートによれば、約4人に1人が「内定承諾後」にもかかわらず、就職活動を継続していた。
「昨年と比べて、かなり増加している。(応募者は)一度も会社を訪れず、社員にも会わずに入社を決めることに不安があるのだろう」(Myrefer代表取締役の鈴木貴史氏)
つまり、これからの新卒採用は「内定を出して終わり」ではなく、辞退されないためのフォローが重要になってくる。そして、そのフォローは内定を出した後だけでなく、説明会や面接など採用活動中にも実施すべきなのだ。
今の売り手市場では、人事担当者だけでなく、現場の社員も総動員しなければ満足できる採用は成し遂げられない。いつまでも買い手市場の感覚で「採用する側が上」という感覚ではうまくいかないのだ。