2020年のある研究によれば、パーム油の90%以上が東南アジアのボルネオ島、スマトラ島、マレー半島で産出されている。どれもが、世界屈指の重要な熱帯雨林のある地域だ。マレーシア領のボルネオ島で行われている森林伐採の50%は、パーム油の生産と直接関係している。

 とはいうものの、世界が消費財のために何らかの植物油を使う必要があるのなら、今のところはおそらくパーム油が最善の選択肢だ。なぜなら、パーム油は、土地利用のフットプリントが比較的低い割に、非常に高い収益を生むからだ。世界全体の植物油の需要においてパーム油は40%を占めるが、植物油生産に使用される土地においては5%を占めるのみだ。

 つまり、世界はパーム油生産のサステナブルな方法を新しく見つける必要があり、ユニリーバは2000年代からその解決に取り組む数少ない企業のひとつだ。

 ユニリーバは「サステナブルなパーム油のための円卓会議」を、最初期から支援してきた。この団体は、製品が森林伐採と関わっていないと保証する認証制度を作った。パーム油のサプライチェーンの複雑さを理解しつつ、消費財の原材料を充分に追跡して、認証制度を実現した。今では世界のパーム油供給量の5分の1が、サステナブルとみなされている。

書影『資本主義で解決する再生可能エネルギー 排出ゼロをめぐるグローバル競争の現在進行形』『資本主義で解決する再生可能エネルギー 排出ゼロをめぐるグローバル競争の現在進行形』(河出書房新社)
アクシャット・ラティ 著、寺西のぶ子 訳

「人々はいずれ、森で何が起きているのかを理解するでしょう。そして、サステナブルでないパーム油に対する反発が生まれるでしょう」、とリンガードは言う。

「でも、こういう問題は一夜では解決しません。サプライチェーンの構築には何年もかかります」

 そうしたことが理由のひとつとなり、ポールマンの指示を受けたリンガードのチームは、ユニリーバ・サステナブル・リビング・プランを作成した。同社の成長を環境への影響と切り離すための目標を設定するプランだ。

 具体的には、たとえ製造する製品の数量が増加しても、自社の製品の製造と使用による環境フットプリントを半分にするのが目標だ。2010年に大企業が設定したサステナビリティに関するあらゆる目標のなかで、圧倒的に意欲的な目標だった。