サステナビリティを
商業活動の中心に置く

 彼は、ユニリーバのサステナビリティに関するさまざまな取り組みについても、見直しを始めた。それまでは、サステナビリティの中心は漁業、農業、水だった。

 現在はグローバル・サステナビリティ・ディレクターの職にあるトーマス・リンガードは、当時、サステナビリティ・チームに所属し、同社の取り組みのポートフォリオに気候変動対策を含める仕事を任された。「ポールが来るまで、サステナビリティは『責任ある事業活動』に分類されていました」、と彼は言う。

「ポールはサステナビリティを、何が何でも商業活動の中心に置こうとしていました」

 リンガードによると、サステナビリティのビジネス・ケース(企業が大規模な投資や戦略的な取り組みを行う場合、会社が得られる価値や利益を説明するための文書)には3つの柱がある。

 ひとつ目は、顧客の期待は変化するという柱で、彼が言うには、やがて顧客は、地球にとって有害でない製品を買うことをよりいっそう考慮するようになる。

 ふたつ目は、よりサステナブルになるためにさまざまな段階を踏むという柱で、たとえば、エネルギー効率をあげること、再生可能エネルギーに投資することは、長い目でみれば費用節約にもなる。

 そして最後は、同社が気候変動対策で役割を果たすという柱で、仮にそうなれば、地球上のほぼすべての国で行う販売がよりどころの同社にとって、事業リスクが減少する。

 リンガードが言うには、気候変動の影響によって、いずれにせよ世界はよりサステナブルな方向に向かうことになる。消費者の需要は短期間で変化するので、「私たちの業界では、トレンドをわずかに先取りするのがよいのです」。彼はそう話した。

ユニリーバが早期に取り組んだ
パーム油のサステナブルな生産方法

 パーム油を例にとろう。パーム油という名称を知らない人もいるかもしれないが、パーム油を含む製品を買ったことがない人はいないはずだ。パーム油は植物油の一種で、歯磨き粉、リップスティック、ドッグフードをはじめ、バイオ燃料に至るまで、多くの製品に使われている。そして、このパーム油の世界の需要は、2050年までに46%増加すると見込まれる。だが、問題がある。