ドイツの脱原発をめぐって、SNS上では時々論争が起こっています。「ドイツは脱原発したが、フランスから電力を融通してもらっているからできる」という意見に対して、「ドイツはフランスをはじめヨーロッパに電気を多く輸出している国だ」という反論がなされることが多いです。
たしかにドイツが電気の輸出国であるのは事実ですが、それは1年とか大きな単位で見たときの話です。でも、冬場の電力がいちばん消費される時期には、自国だけでは電気が足りなくなるのです。
大事なのはリアルタイムに国家間で電気の融通がしあえて、それがセーフティネットになっていることなんですね。だから、議論としてはかみ合っていないわけです。
ここで私がみなさんにお伝えしたいのは、リスクを考えるときにはひとつの面だけを見てすぐに判断せずに、いろいろな面から見て、深く背景を知ろうということです。
原子力発電をやめて、再生可能エネルギーの割合を増やすのはセーフティネットがあって初めてできる政策です。原発における安全面のリスク、将来世代へ大きな負担を強いるリスクと、実際の経済にかかるリスクのバランスをうまくとって、ドイツは現状、脱原発を完了させました。
海外事例をそのまま
日本に当てはめるのは難しい
ただ、これをそのまま日本にも当てはめることはできません。日本は島国で、海外と送電線がつながっておらず、ドイツのように他国から電力を融通してもらうことができないからです。
つまり再生可能エネルギーの比重を上げたときの、セーフティネットがないんですね。現状、日本ではほとんどの原発が稼働していませんが、エネルギーの約7割を火力発電で賄っています。
しかも、これから再生可能エネルギーを増やしていくとすると、実はその分だけ、火力発電所も増やしていかないといけません。いったいどういうことでしょうか。
再生可能エネルギーは気候に左右されるため、供給が不安定です。だから再生可能エネルギーで足りないときは、ほかの方法で電気をつくる必要があります。