おなじ理屈で、自動車やアルミ鉄鋼以外の日本製品は24%の相互関税でコストが1.24倍になり、1ドル=120円近辺の為替レートです。ファナックも安川電機もパナソニックもうろたえるほどの話ではないと捉えることはできないことではないでしょう。

 ただ話はそう簡単ではありません。円安になるたびにボロ儲けというこれまでの構造で日本の輸出企業はここまで株価を上げてきたのですから、一瞬で前提が超円高(と同じ)に戻ったら株価が急落するのはあたりまえです。

 この話をさらに俯瞰して、一歩引いて日本全体で眺めてみると大変な話です。新しい経済のルールでは、「自動車を輸出するときは1ドル=120円だけど、小麦や大豆を輸入するときは1ドル=150円で計算するからね」というものです。ずるいですよね。向こうに圧倒的に有利な条件です。

「じゃあ対抗して日本も相互関税24%で報復だ」

 などと考えたら状況はもっと悪くなります。小麦の輸入が1ドル=186円になる(計算式は150円×1.24=186円)のと同じです。この4月に食品中心に4000品目以上が値上げされたのに、その値上げがさらに加速して庶民の生活がどんどん苦しくなってしまいます。

「でもアメリカ人も車の価格が上がるからインフレで得をしないんじゃないの?」

 これがこれまでの経済人の感覚でした。世界経済のルールを捻じ曲げると誰も得をしないので、トランプもそこまで乱暴なことはできないんじゃないか?というのがこれまでの常識でした。

 今回、トランプ大統領がそこに踏み込んだということは、意図的に双方の経済が悪化しても、それでもアメリカにプラスになると判断したということです。トランプ大統領の視点でどうプラスなのかを考えてみます。