オープンにしても車体剛性に変化はない。多少路面の荒れた道を抜けても足回りは自分の仕事をしっかりと遂行し、ドライバーを不安にさせない。乗り心地はクーペと同等、もしくは少しいい感じにも思われた。よく動く前輪と存在感のある後輪のおかげで低速域からマシンとの一体感が存分に味わえる。

 ルゥルルルルルゥ~と心地よいサウンドを浴びながら、海岸線を走った。前夜は風が強かったのだろう。路面にはところどころ大量の砂が積もっており、通り過ぎるたびに車体が滑る。だが、ドライバーが自然と反応し、それを車体側が上手に補助して姿勢を正すという見事なシャシー制御を図らずも低速域で体感することができた。FRらしく思う存分に滑らせても楽しいマシンであることは、クーペをテストコースで試したときに経験済みだ。

 ワインディングロードを駆けた。レースモードでは相変わらず後輪の動きに多少違和感があったが、慣れるとそれを武器にタイトコーナーでも見事に、しかも速く駆け抜けることができる。加速フィールは素晴らしい。エンジンは9000rpmまで一気に駆け上がる。そのスムーズさには驚嘆する他ない。あまりに滑らかすぎて、エンジンらしくないと思ってしまうほどだ。

 個人的に最も気に入ったのは制動フィールだった。よく利くだけでなくブレーキコントロールに快感を覚えた。ブレーキを踏むことが楽しくなれば、アクセルを踏むことはもっと楽しくなる。さすがはイタリアのピュアスポーツブランドが作るメインストリームモデルだ。ドライバーのすべてを理解している。

(CAR and DRIVER編集部 報告/西川淳+九島辰也+大谷達也 写真/Ferrari)

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