この影響を受けることで人は、少し知識を得ただけで、その知識は全体のほんの一部でしかないのに、まるですべてを知っているかのように過信してしまいます。自分自身を過大評価してしまうのです。その結果、断片的で浅い知識に基づいた短絡的な決断を下してしまいます。
これと反対に、成果や結果があるにもかかわらず、自信や自尊心を持てないのも、やはり「ダニング=クルーガー効果」の影響です。能力が高く経験が豊富だと、自分以外のレベルの高い人についても把握できます。その結果、自分自身の能力を過小評価してしまうのです。
「ダニング=クルーガー効果」のもとになった実験を紹介しましょう。
コーネル大学のデイヴィッド・ダニングとジャスティン・クルーガー(この2人の名前を取って「ダニング=クルーガー効果」と名づけられた)は、45人の大学生を対象に、論理的思考に関する20項目のテストを行いました。
終了直後、試験を受けた大学生全員に、自分がどれだけ点数が取れたかを予想してもらい、実際の点数との差を見ます。
全体を「実際の得点」順に、上位から4グループに分け、各グループにおける「予想得点」と「実際の得点」のギャップを集計しました。
すると、最もギャップが大きかったのは、実際の得点が「最下位グループ」。つまり点数の低い学生ほど、自分を過大評価していたのです。反対に、「最上位グループ」は、自分たちを過小評価していました(注1)。
バカの山を駆け上がる真っ最中は
本人も周りも危険な状態
下の図は、「ダニング=クルーガー効果」における、「知識・経験」(横軸)と「自信」(縦軸)の関係を表しています。

注1 Kruger, J., Dunning, D. Unskilled and Unaware of It: How Difficulties in Recognizing One's Own Incompetence Lead to Inflated Self-Assessments.Journal of Personality and Social Psychology, 1999, 77, 1121-34.