1「バカの山」……思い込みの段階。一部の知識を得ただけで、すべてを理解したと思い込み、知識や経験がほとんどないのに自信が急激に高まる。
2「絶望の谷」……思い込みだと知る段階。「バカの山」をすぎると、自分の知識はほんの一部にすぎず、学ぶことはたくさんあると知り、すっかり自信を失う。
3「啓蒙の坂」……自信を持ち始める段階。改めて学ぶことで成長を実感し、少し進歩できたことで自信を徐々に取り戻し始める。
4「継続の大地」……正しく自己評価できる段階(最終地点)。さらに学びを進めることで成熟。自分の得意や不得意も理解して正しく自己を評価し、安定的に自信を持てるようになる。
入社したばかりでまだあまり仕事ができないのに、「自分はできる」と思い込んでいる社員も見かけます。もしかしたら「バカの山」の頂上で天狗になってしまっているのかもしれません。
投資初心者が、たまたま短期間で利益を得られたりすると、それがビギナーズラックにすぎないのに「自分には能力がある」と勘違いすることがあります。調子に乗って難易度が高い商品に手を出して、大損をすることもあります。
また最初だけ配当を支給するなどして、ニセの成功体験をさせる投資詐欺があります。これもまた「やはり、この投資を選んだ自分の目は確かだった」という勘違いをさせることで、さらに多くのお金を投資するよう促していると考えられます。
過去の賢人たちも何度となく
戒めた人類普遍の問題
自分を過大評価するなど、自分の能力に対する誤解を戒める言葉は歴史の中でも数多く生まれています。主なものを挙げてみましょう。
・「無知の知」ソクラテス
・「愚か者は自身を賢者だと思い込むが、賢者は自身が愚か者であることを知っている」ウィリアム・シェイクスピア
こうした自己判断の誤りは古くから問題になっています。
一方、2000年代にも、似た問題が大きな話題となりました。450万部を超える大ベストセラーとなった書籍『バカの壁』(新潮社)です。著者の養老孟司さんは、バカの壁とは「自分が知りたくないことや考えたくないことについて情報を遮断しようとして自主的に張りめぐらせている壁のこと」と述べています。