大前提として、万博に限らず、鉄道という大量輸送機関をバスで代替はできない。鉄道不通時に対応できるバスを用意しろという主張は妥当ではない。1時間程度の輸送障害であれば、回復を待つというのが最も現実的な対応だ。

 だが、来場者の集中という意味では問題が残る。愛・地球博の鉄道系輸送は会場に直結する愛知高速交通東部丘陵線(リニモ)を軸に、地下鉄東山線藤が丘駅、愛知環状鉄道八草駅という2方向のルートがあった。

 実際の来場者交通分担率を見ると、八草方面が23%、藤が丘方面が18%、名古屋駅などその他の駅に接続するシャトルバスが合計5.5%だった。一方、自家用車(パーク&ライド)と団体バスの合計が40.8%あり、自動車の比重がかなり大きい大会だったことが分かる。

 これに対して、大阪・関西万博は大阪メトロ中央線1本に60%近くを頼っており、不通時の影響が大きい。愛・地球博のゲートは長久手会場に3つ、瀬戸会場に1つあり、異なる方面のバスも容易に利用できたが、今回は東ゲートと西ゲート間の移動が容易ではなく、シャトルバスに余裕がないため、東ゲートに来場者が殺到してしまう。人の滞留はトラブルの原因だ。

ガラガラのバスなのに乗れない…
現地で見たさまざまな問題

 現地では細かい点も気になった。関西MaaSのデジタルチケットはICカードのIDを入力するもの、QRコードをタッチするものがあるが、万博シャトルバスは使用開始ボタンを押して係員が確認する仕組みだ。だが、桜島駅シャトルバス乗り場には「(デジタルチケット画面上の)『今からこのチケットを使う』はスタッフの目の前で押してください」という張り紙があった。

 ゲート手前で言われてももう遅い。見せる前に押したらどうなってしまうのか、まさか試してみるわけにもいかず、忙しそうなスタッフに聞くこともできなかったが、確認に余計な手間がかかるというのであれば、混雑時に輸送力を低下させる要因になりかねない。また、関西MaaSは英語にも対応しているが、張り紙は日本語だけだった。