ちなみに以前の記事でも書きましたが、私は BYDのドルフィンを所有しています。購入したときに少し不便だと感じたことは、テスラと違ってBYDには200V用の充電ケーブルしか付属していないのです。日本のユーザーの大半が自宅ガレージには100VのコンセントしかないことをBYDはご存じないのかもしれません。

 そして、三番目の障壁としてチャネルの問題があります。これまでBYDは日本では高価格車戦略を採用してきたので、ディーラー網も主に都市に集中しています。しかし軽自動車のユーザーは地方都市から郊外にかけて多いのです。

 首都圏にお住みの方でも週末に郊外に出かけてみるとわかりますが、都心を離れてどんどん山間部に走っていってもかならず、スズキの看板を掲げた整備工場が見つかります。実は軽自動車の販売チャネルはディーラーだけでなく、こういった地域に根付いた整備工場やガソリンスタンドが兼ねているケースも多いのです。これを業販チャネルと言います。ビジネス用語で言い換えるとディーラーの代理店ということになるでしょう。

 このような全国をくまなく網羅できる業販チャネルはBYDが一から構築するのは大変な手間でしょう。ひとつの手としては既存の業販ではなく、ホームセンターやヤマダ電機などを新規の業販チャネルとして開拓することはできないことではないでしょうが、過去、似たようなトライをした会社はことごとくうまくいっていません。

 鬼手としては、たとえばスバルに軽の販売を全面委託するといった、日本の自動車メーカーとの大型業務提携は有効かもしれません。スバルは現在では日本および北米市場でレヴォーグなどのSUVにフォーカスした事業展開をしていますが、以前は自前で軽自動車を製造していました。現在ではダイハツのOEMの軽自動車を販売しています。当然ながら過去に開拓した業販チャネルは健在です。

 いずれにしても現在のBYDジャパンのディーラー網では、軽自動車市場のコアとなる消費者にリーチすることが難しい。ここがBYDの日本戦略のボトルネックになりそうです。