上の内容を要約すれば、「あなたの会社は、働く人に対して、どのくらい快適な職場を提供できているか」という指標です。去年の暮れにも、評価の等級がティア4や5の低ランクだった企業のCEO宛てに、「投資家の目線で、職場のメンタルヘルスはこうあるべきと考えますが、あなたの会社は現在こうなっています」と、改善を促す文書を送りました。何より企業トップに認識を持ってもらうためです。
従業員メンタル悪化=業績悪化
日本企業のCEOに欠ける意識
実施初年度に私が驚いたのは、ティア2にランクされたメガバンクが、発表のわずか2日後にHPで「今回ティア2になったのは、○○が不足していたからで、来年度にはティア1になることを目指します」と表明したことです。実際にそのメガバンクは、翌年からティア1に昇格して、維持し続けています。
この例に限らず、HPに「社員が気持ちよく働けるために、こんな工夫をしています」というメッセージを載せている企業はたくさんあります。日本企業のHPが、売り上げや業績を真っ先にアピールしがちなのとは、様相が異なります。閉鎖的な島国である点や長い不況に苦しんでいる点は日本も同じですが、従業員のメンタルが企業の業績悪化に直結するという認識が、イギリスでは大きく進んでいるのです。
2022年からはグローバル企業を対象に株価指数(MSCI ACWI)に組み込まれた従業員1万人以上のトップ100社を選んで、評価を発表しています。日本企業で2024年の「Global 100」で評価対象になったのは、トヨタとソニーの2社だけでした。トヨタは前年にはティア4の評価でしたが、改善が認められてティア4からティア3に一段階アップしました。
ヨーロッパにおいては、企業が環境や地域社会に貢献しているか、株主や顧客、取引先、従業員まで含めたステークホルダー重視の視点からサステナビリティーを考え、企業ガバナンスを構築しているか、といった点をアピールすることが、未来に向けて投資するに値する企業だという評価につながります。