賃金格差や男女格差の解消だけでなく、第三者的な窓口を設けたりキャリアカウンセラーを介入させたりするなど、イギリスに学ぶべき点は多々あります。まず、CEOが「従業員が気持ちよく働いてくれれば業績は上がり、持続される」と認識して旗振り役になることが肝心です。

 日本における健康経営は、雇用制度と労働安全衛生法に基づく従業員支援が中心で、行われているのは定期的な健康診断やストレスチェック、禁煙対策などです。こうした支援は、不調になった従業員の早期発見と支援には有効です。しかし現場の実情は、ストレスチェックは実施されても、その活用が円滑にいかないこともしばしばです。

 評価が高い企業では、従業員がメンタルに不調をきたしたときの対応よりも、そうなる前の予防策や、自分のキャリアや仕事の向き不向きなどに関して相談できるシステムがつくられています。日本の場合、相談と言えば直属の上司か人事部門を相手にせざるを得ず、評価や利害が絡むので言いにくい場合が多いのと、大きな違いです。

 日本では、「メンタルの不調を会社に知られたくない」「メンタルが弱いという烙印を押されたくない」という独特の企業風土のせいで、メンタル不調を予防し,ウェルビーイングを目指すのは難しい現状があります。

 部下にメンタルの不調をもたらさないためには、どうすればいいのか。最後に、具体的な処方箋を考えましょう。

「メンタルが壊れて休職する人」が無意識に従っている「しょうもない美徳」