メンタルの不調による従業員の休職や離職が増えていることは、イギリスでも問題視されてきました。2017年には、年間に30万人以上が精神的な理由から離職している事実が報告され、その経済的な損失が問題となりました。状況は、コロナ禍でさらに悪化しました。イギリス政府や投資家は、メンタルの不調がもたらす企業利益の損失に危機感を抱き、各企業に対する働きかけが必要だと感じるようになったのです。

 メンタルヘルスというテーマから投資家が企業を評価するのですが、格付けではなく、情報開示と改善を促すためのツールとして設計されています。評価は、CEOへのアンケートとHPの記載内容に基づいて行われます。

 内容は次の4つの分野に大きく分けられ、さらに27の項目に細分化されています。それぞれの分野に割り当てられた評価のスコアの合計点を基に、最高評価のティア1から最低の5までの5段階でで企業の取り組み評価を行っています。

Management commitment and policy (68ポイント)
(経営の責任と方針)
Governance and management (77ポイント)
(ガバナンスと運用)
Leadership and innovation (22ポイント)
(リーダーシップとイノベーション)
Performance reporting and impact (50ポイント)
(成果報告と影響)

 ベンチマークに挙げているのは以下のようなポイントで、具体的な対策に関する詳細な質問が提示されます。

・企業のCEOやトップの立場の人が従業員のウェルビーイングを守り、メンタルヘルス支援を明確に表明して、HPで情報公開をしているか。
・仕事の在り方や職場環境を含めて、メンタルヘルスを守る体制ができているか。賃金の不平等や男女格差など、DEI(Diversity, Equity,Inclusion)についての環境はどうか。公正性について、HPで情報公開されているか。
・管理職がメンタルヘルスについての知識と理解を深める研修を行い、CEO自身がメンタルヘルスにリーダーシップの役割を果たしているか。
・職場が、メンタルヘルスについてオープンに話し合える状態か。
・職場で、メンタルヘルスについての知識普及の努力が行われているか。
・CEOが従業員のメンタルヘルスや幸せについて知識を持ち,把握し、対策や目標について定期的に情報公開しているか。