
メンタル不調大国・日本が海外から学ぶべきことは多くあります。日本の健康経営、ウェルビーイング経営の問題点を、心療内科医で産業医の海原純子さんに解説してもらいました。(構成/石井謙一郎)
業員のメンタルヘルスが
業績に大きく関わっている
悪しき企業風土が従業員のメンタルヘルスに悪影響を及ぼすことを問題視し、改善に乗り出したのが、イギリスで最大規模の投資運用機関CCLA(Charches, Charities and Local Authorities)です。
CCLAは、環境維持や持続可能な社会への貢献を目指す活動をする立場から、投資を行うファンドです。従業員が気持ちよく働ける職場を事業主がどの程度提供しているか、ウェルビーイング経営を実践しているかの評価しています。2022年に「Corporate Mental Health Benchmark(企業におけるメンタルヘルスの評価基準)」を策定し、企業ごとの調査結果と評価を公表すると共に改善を促す活動を始めました。
評価基準を策定するメンバーは、CCLAの担当者のほかに、外部から専門家委員が無償で参加しています。実は私も、その専門家メンバーの一人です。
投資運用機関であるCCLAがなぜ、従業員のメンタルヘルスのために提言を行うのでしょうか。メンタルの不調で休職者が増えたり、病気に至らないまでも活気のない従業員が増えれば、企業の業績低迷に繋がるからです。企業のメンタルヘルス対策が業績に大きく関わってくるという視点から、ウェルビーイング経営を実現させようという狙いなのです。