学部の留学生は数が少なく、入学試験の壁も高い
日本の大学における留学生の受け入れは、OECD平均を下回っている。これまで、日本政府は、「大学の国際化」や外国との相互理解や友好親善などを目的として、留学生を積極的に受け入れる方針を打ち出してきた。新型コロナの流行が原因で一時的に留学生数は大きく減少したが、2023年に政府は「40万人の留学生を受け入れる」という数値目標を改めて打ち出している。
神戸は誰もが知る国際都市である。神戸大学も「世界に開かれた国際都市神戸に立地する大学として、国際的で先端的な研究・教育の拠点になること」を公式に宣言している。東北や関東で育った私は神戸にとって「よそ者」なのだが、そんな私にとっても、神戸は「よそ者」に開かれた住み心地のよい街だ。私の研究室にも常に留学生が在籍しているし、外国に留学する日本人学生も多く、神戸大学はそこそこ国際化している大学だと私は感じている。
しかし実際には、神戸大学の留学生比率は国内の他大学と比較しても高くはない。
神戸大学に在籍する外国人留学生は、学部生228名、大学院生1079名、総数で1307名に上る(2024年5月現在)。在籍者全体の割合にすると、学部生は2%程度、大学院生は25%足らず、学生全体では8%程度ということになる。留学生数の多い国立大学では、学生に占める留学生の割合は15%を超えている(東京大学、東京工業大学、筑波大学、一橋大学など)。
神戸大学の留学生の出身地域は、81%がアジアで、その大半を占め、ヨーロッパ11.4%、アフリカ3.2%、中南米2.1%、北米1.1%、中近東0.9%、オセアニア0.3%と続く。アジアの中では、中国が59.1%と過半数を占め、韓国5.1%、インドネシア3.9%、マレーシア2.4%、ベトナム2.0%、バングラデシュ1.9%と続く。
大学院生は国籍と年齢の点で多様である。他方、学部生は日本の高校を卒業したての同世代の若者が大半で、多様性に富んでいるとは言い難い。学部の留学生数自体が少なく、入学試験の壁も高い。
学部の留学生の多くは、母国の高校での進路選択に際して、親元を離れて異国の大学で学ぼうと決意し、日本語学校などで猛勉強をした後、日本人の受験生とほぼ同じ入学試験を受ける。高いハードルを越えて入学してくる外国人留学生に対して、私自身は「偉いなぁ」という漠然とした感想をもっていたものの、どのような背景で日本の大学を選んでやって来るのかということを掘り下げて知る機会は、これまでなかった。
学部生として学んでいる留学生の選択と生き様について関心を寄せていた私は、「社会教育計画論」の授業で出会い直した朱さんに、改めて話を聞いてみたいと思った。そこで、日本の大学に留学することにした経緯や神戸大学での経験を中心に、朱さんのライフストーリーを聞くことにした。