そもそもグローバルな視点で見れば、世界的な都市のマンション価格が1億円というのはもはやそれほど高い金額ではないというか、はっきりいえば割安です。日本経済が成長しなかったせいで日本人にとっては1億円が相変わらず庶民に手が届かない金額に見えるというだけで、自国の経済成長の恩恵を受けた外国人の中には、20年前の5000万円と今の1億円の経済価値が同じくらいという人がざらにいます。不動産価格に手が届かなくなったというのは外国人ではなく主に日本人の問題だと言えそうです。
2. 安全と水の問題
このように日本人が一番解決してほしい不動産価格の高騰の問題は、実は外国人による不動産購入を規制しても解決しないというのが私の見立てです。仮にその結論に納得いただいたとして、では他に外国人が不動産を購入することの何が問題なのでしょうか?
実は2番目に問題提起する、外国人の不動産購入による安全保障上の問題こそ、日本人にとってより深刻だと言えます。
このうち、自衛隊基地や空港近辺、離島などの土地が購入される問題は国会でも論議されている問題で、実体を把握し、利用を制限するなどして安全保障上のリスクを減らす必要があるでしょう。
その問題は今後解決していくとして、まだ手つかずのままで放置されている安全保障上の最大の問題は水資源の問題です。
日本は水を安全保障上の資源として規定していません。しかも、日本の法律では地下水の権利はその土地の所有者に帰属するとされています。ですから今、危惧されているように外国企業が日本の水源の土地を大量に購入している場合、現行法ではその開発をストップさせることができません(地方自治体では条例で地下水利用を規制しているところもある)。
たとえば、中国企業が大量の水源を抑えたとして、日本アルプスの水をエビアンやクリスタルガイザー、ボルヴィックのようなグローバルブランドの天然水に育てあげて、それを中国やアジア市場で大量に販売するとします。潜在的には、リニア中央新幹線工事で大井川が枯渇するリスクよりもはるかに大きな水源問題が発生する可能性があります。