絶対に必要なのは、遺言を書くことです。「みんなありがとう、あとはみなで仲良く暮らしてくれ」というメッセージを伝える遺言ではなく、自分の持っている不動産や金融資産などを誰にどのように残していくかの意思表明の遺言です。

 その前提としては自分の不動産や株式、投資信託、生命保険がいくらなのか、把握しておくことです。稀ではありますが、宝石や美術品のように価値のある「もの」もあります。

 そうした財産の価値は毎年変動しますし、詳しい価格はわからなくても結構です。でも、どの銀行や証券会社のどの支店で口座番号はどうなっているか、印鑑はどれか、暗証番号は何か、生命保険証書はどこにあるか、不動産の権利書はどこにあるか、1年に1回ぐらいは確認しておきましょう。誕生日にチェックすることにしておくといいですね。

孫にお金を残すよりも
生きる力を残すべし

 そのうえで60歳か70歳か80歳か、あるいは大きな病気をした時などの節目に遺言状を作成する人が多いようです。まだまだ元気だからそのうちに作ろうなどと思っていてはずるずる日が過ぎてしまうので、まだ早すぎると思う時期に作成するというのが鉄則です。

 正式には公証役場で公証人立ち会いの下で形式にのっとった遺言状を作成するのが一番確実ですが、今は信託銀行なども対応してくれます。自分だけで自筆で書いている人もいますが、遺留分などを考慮していないなどの問題もありますので専門家に相談していろいろアドバイスをもらうべきです。

 孫たちも養子にして相続人を増やすとか、子どもから孫に相続する際の相続税を少なくするよう孫たちには不動産、子どもには現金を残すなど、いろいろな対応策があるようですので、詳しいことは専門家に相談してください。

 私自身は、子どもや孫にはお金を残すより教育を残すべきだと思っています。子どもには「釣った魚を与えるのではなく、魚の釣り方を教える」という言葉があります。孫たちには魚の釣り方=仕事をする力や社会で生きていく力を伝えたいと思います。

 私はできれば一生稼げる専門的な資格を取らせたいと思うのですが、人によっては起業を応援する、ビジネスをサポートする、人脈を紹介するのが、「魚の釣り方」を教えることだと考える人もいます。人によって「できること」「残したいもの」は異なっています。