普通の教育でなく音楽やスポーツなど特別な才能を持つ子どもの教育も、親と家族の大変大きなサポートを必要とします。及ばずながらも応援しましょう。少なくとも「この子にそんなに才能があるのかね」などと水を差すことはNGです。

 そして孫が頑張った末に志を得ず上手くいかなかったら、黙って温かく迎えてあげましょう。

祖父母が孫に残せる
もっとも貴重な遺産とは

 私は祖父母が孫に残すべきは、お金や物ではなく、自分たちの生き方、老い方だと思っています。

 私の一番年長の孫に、私に対する評価を求めました。もう大学生で一緒に過ごす時間はあまりないのですが、それなりに良い評価をくれました。

「自分の知らないことをたくさん教えてくれるところが好き」「旅行に行くと世界史や現代社会の出来事と結び付けて話してくれる」と言ってくれています。彼女は理科系であまり歴史や文学に興味がないのに、私ばかり話していては嫌われるかなと思っていましたが、面白がってはくれなくても関心は持ってくれていたようです。

「祖母が現在も仕事に向き合っている様子を見て、私も頑張ろうという意欲につながっています」「祖母が、女性が活躍することの意義、学び続けることの大切さを話してくれたのが自分の考え方を作るうえで参考になりました」と言ってくれるのを見ると、自分の理念が次の次の若い世代にも受け継がれていると感じて、幸せな気持ちになりました。

書影『祖父母の品格 孫を持つすべての人へ』(朝日新聞出版)『祖父母の品格 孫を持つすべての人へ』(朝日新聞出版)
坂東眞理子 著

 モノやお金より、自分の仕事・生き方・考え方を孫に伝えることが大事です。彼女は私がいつも忙しがっているので、もう少しゆっくりしたほうが良いとも苦言を呈しています。

 おそらく多くの孫たちは、親より少し遠い存在である祖父母の生き方、考え方に無関心というわけでなく、ほかの活動に紛れているので、あまり興味がないように見えるだけなのです。話してみてすぐには反応がなくても、私は機会があればできるだけ自分の仕事、好きなこと、考えてきたことを孫たちに伝えたいと思います。

 きっとそれは聞き過ごされるだけに見えますが、心のどこかに引っかかっていると信じたいと思います。もしかしたら祖母はこういうことを言っていたと思い出してくれるかもしれません。