ただ、社内での新規事業における意思決定の構造をあらかじめ整理できているのがベストですが、状況に応じて変化するので、つねに意思決定の構造に気を配りながら進めていくことになるでしょう。

 新規事業ではいろいろな意思決定の場面があるわけですが、重要なのは「なにをやるのか」「誰がやるか」「どう決めるか(意思決定の枠組みをどうするか)」そして「どうやるか(まずはやってみる)」の4つだと考えます。

アイデア自体に
価値はない

 最初に問題になるのが「新規事業としてなにをやるのか」つまり、新規事業における最初の最大の意思決定です。

 多くの場合、先に実現したいことがあり、その手段として起業などがあるわけです。新規事業を立ち上げてから、その後になにをやるかを考えるのは順番としては逆ですが、たとえば社内の新規事業を統括する部門などではアイデア創出の必要性に迫られることはあるでしょう。実際にエキスパートネットワークの活用でもそのような相談もよく受けており、事業としてアイデア創出の支援も行いました。社内での新規事業コンテストのイベント審査員などもしたものです。

 自分のなかにアイデアがない場合や、新規事業を立ち上げるという目的のもとに作られた組織では、社内外でアイデアを募ります。

 発案者が担当者になるケースであればよいのですが、原体験なき新規事業責任者による事業は、新規事業の仕組みや担当者が成熟している場合を除いて難易度が高くなります。表層的なアイデアを大量に募るよりも、自分の原体験を特定し、掘り下げてアイデアを膨らませていくほうが適していると考えています。

 また、起業アイデアについて、「将来起業したいのです。なんの事業で起業するかは、どうやって見つけるのでしょうか」といった質問を受けることが少なくありません。

 そもそも、世に出ていない秀逸なアイデアが外に転がっていることは考えにくいです。ときどき自分しか考えていないアイデアがあるように思っている人もいますが、「アイデアに価値はない」と思った方がよいでしょう。アイデア自体にそれほど差があるかというと、そうでもありません。むしろ、実行こそ重要です。