事業成功のために
アイデアよりも重要なことは

 起業アイデアにこだわりすぎたり、アイデアを過大評価したりするのはよくありません。

「誰も思いつかないような至高のアイデアが思いついたら起業する」、もしくは「よいアイデアさえあれば新しい事業は成功する」「アイデアさえあれば自分でも起業するのに」などというのは、アイデアの過大評価だと思います。

 入り口の1つのアイデアで成功確率が大きく変わるかというと、そこまで重要ではないでしょう。アイデアの裏にある原体験や創業の想い、社会課題の認識は大事ですが、素晴らしい事業モデルが思い浮かんだらそれですべて解決とはなりません。

 アイデアはもちろん事業を加速する一助にはなりますが、それよりも、まずやってみることや、そこからどのようにピボットして検証を進めながら事業を磨いていくか、そしてもともとのミッションや実現すべきことがブレないことの方が重要です。

 アイデアのためにも、原体験や解像度は必要です。特定業界に専門性があったら、そこをベースに考えてみてください。他の人にない視点や深さを起点に、原体験を伴うアイデアを創出できるはずです。

 一方で、専門家だからといって自分の業界に新しいアイデアがあるかというと、そんなことはありません。そうであればとっくに実現していますし、むしろ業界慣習や価値観に浸っているために、できない理由をたくさん思い浮かべてしまいます。

 むしろ、外部の人間がフレッシュな視点で見ることで浮かぶアイデアもあります。異なる領域の専門性が結びつくことでイノベーションが起きることも少なくありません。

「なにをやるか」よりも
「誰がやるか」が勝敗を分ける

 アイデア自体は価値がないかもしれませんが、それが異なる視点で組み合わさることでよいものになる可能性はあります。そしてそれが実行されていくことで、また新しい価値になっていくのです。アイデアだけで事業は成り立たず、プロトタイプを作り、それを実行し、実現していく過程で、そのとき得られる解像度に基づいて知見をプロダクトに盛り込んでいく。そうして徐々にアイデアは形になっていくものです。