いま見えている、成功しているといわれる事業が、世界で最初に思いついたアイデアではないでしょうし、事業化したのが最初だったかというと、そうではなかったケースが大半でしょう。

 どんなに新規性や先進性を感じるビジネスにおいても、先行者はいます。だからこそ、アイデアよりも誰がするか。これがビジネスにおいて本当に重要です。模倣から始まるケースもありますが、それでも事業を進めていると、自然に事業オーナーの色がついていきます。

優秀なサラリーマンタイプより
リスクテイクできるリーダーを求む

 問題なのは、形式上は意思決定者がいるとしても、実質的には不在のケースです。

 上司の介入があったり、皆の意見を調整して盛り込もうとしたりすることはあります。たくさんの意見を盛り込んでも、必ずしもよいサービスにはなりません。むしろ、サービスのコンセプトや価値がぼやけていくものです。コンセンサスをとることに終始すると機を逸し、無駄なエネルギーを重要でないところに使ってしまいます。

書影『ビジネスリーダーのための意思決定の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)『ビジネスリーダーのための意思決定の教科書』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
川口荘史 著

 担当者が優秀であるかどうかは意外と重要ではありません。処理能力や調整能力が高くても、かえってダメになることもあります。純粋に課題に向き合っているか、それらについて考え続けていけるか、粘り強く実行し続けられるかといった部分の方が重要です。

 一方で、社内新規事業については、多分に意思決定構造に向き合う必要があります。状況にもよりますが、社内政治とまでいかなくとも、担当の根回しや調整などの社内力学に対して適切な対応をしていかなければならないでしょう。

 しかし結局のところ、組織内で社員としてリスクを抑えつつ、最適解を探るようなスタンスでは新規事業を進めるのは難しく、むしろ自分で主体的に意思決定していく覚悟や意思の方が重要です。

 調整能力に長けて、期待値を読み取ったり、合意形成が上手で失敗のリスクを下げることができるサラリーマン力が高いタイプよりも、自分の意思と仮説を信じてリスクテイクできるタイプのほうが可能性はあるでしょう。