ところで、このように相手の感情をくみ取った反応については、まったく同じ状況ではないですが、似た現象として、母親と赤ちゃんのやりとりにも見出すことができます。
母親が赤ちゃんの気分に波長を合わせた反応をすることを、心理学の分野では「情動調律」と言っています。
たとえば、赤ちゃんが笑っていたとしたら、母親もにこにこしながら「気持ちいいね」と声をかける。楽しそうだったら「トントントン!」と言いながら、おしりをリズミカルにたたく。赤ちゃんが泣いていたら、母親も悲しそうな顔をして「いやなんだねー」と声をかける。これが情動調律です。
人間関係を円滑にするため
人は相手の気持ちを考える
こうすることによって、背後にある感情を母親と赤ちゃんの2人で共有することができるようになるわけです。このとき母親は、「ああかな」「こうかな」と赤ちゃんの気持ちに思いをめぐらせるわけですが、そんなふうに思いをめぐらせていることを、自分では意識していないはずです。
これはあくまでも似た例ですが、このように、人には相手の気分を推測したり、相手に合わせようとしたりする反応が自然に起こるということは言えそうです。
そしてそれが、人と交流するうえで大切な役割を担っているのです。
困っている相手なら、その気持ちを推しはかりながら話を聞いてあげようとするでしょう。
相手の気持ちを考えながら話を聞いていくときに起こりやすい心理現象として、境遇が似ている相手の場合は共感しやすくなる、ということがあります。みなさんも、生活する中で思い当たることがあるのではないかと思います。たとえば、年齢が離れている人の話よりも同い年の人の話のほうが、より身近に感じると思います。
ほかにも、同じ部活動の友だちから、練習がきつすぎるというような相談を受けたら、自分自身もその厳しさがわかっているからこそ、共感できると思うのです。