加害者は自分自身も
グルーミングしている

【シーン(11) SNS おれ、会社経営してるから】
女の子 バイト先で使えない奴って言われた
男性 ひどいな。おれならそんな言い方しないけど
女の子 もう自信ないな……。え、おれならって?
男性 おれ、会社経営してるから。もっと従業員の気持ちを考えるよ
加害者は、「加害者」らしく見えません。ときどき、犯罪者をえがいた絵に、サングラスをしていたり、見るからに悪そうな顔をしていたりするようなものを見かけますが、実際にはそんなわかりやすい顔はしていないのです。
海外の研究では、性的グルーミングの加害者は、対象をグルーミングしますが、それだけでなく、その周囲の人たちも、そして加害者自身をもグルーミングする、と言われています。つまり、周囲の人たちもだまされてしまうし、悪質な行為をしているという事実から自身の目を背けさせている、というのです。
ですから、加害者(特に性的グルーミングの)は、出会いのはじめでは悪そうに思われない、ということがあります。
では、加害者はどのように自分を演出しているのでしょうか。
まずはシーン(10)でも説明したように、いかにも優しく、愛情があるかのように見せる、ということがあります。それから、実際に社会的立場が上であるという権威を利用する、あるいは実際はちがうけれど、権威があるかのようにふるまう、ということもあります。
実際に立場が上、というのは、習い事の指導者、地域で活動している大人、教員、会社の上司といった場合です。権威があるかのようにふるまうという典型例は、SNSを介して知り合った人が、事実とは異なる姿を演出するような場合でしょう。「権威」と書いていますが、シーン(11)のような会社の経営者という肩書がうそであったり、なんとなくすごい人だと思わせたり、といった場合もここにふくまれます。