加害者が狙っているのは
対象の優しさや親切心
シーン(7)を見てみましょう。同級生、あるいは学校の先輩後輩といった関係でしょうか。
男の子は、親が自分の話を聞いてくれず、やりたいことに反対ばかりすることが悩みだ、と言っていますね。このような話を聞いたときに、みなさんだったらどう感じるでしょうか。
うちの親は普段からよく話を聞いてくれるから、あまり共感できないという人もいるかもしれません。他方で、私も親に話を聞いてもらえないし、やりたいことを反対されることが多いからよくわかる、と感じる人もいるでしょう。
同じような境遇だと相手に心を寄せやすくなり、より親身になって話を聞いてあげたくなります。
よく知っている人との普段のやりとりであれば問題はないと思います。だれだって相談した相手が親身に話を聞いてくれたら、とてもうれしくなると思います。
ただ、これが性的グルーミングだとしたら、ここで少しだけ注意をはらってほしいのです。なぜなら、相談を持ちかけ、親身になって話を聞いてくれるあなたの気持ちを利用しようとしている可能性があるからです。加害者は、そうした人の優しさや、相手が向けてくる関心を利用して、関係を結んでいこうとするのです。
先ほど「同じ境遇」と書きましたが、自分がポジティブに思っていることよりも、自分がどこかネガティブに思っていたり、ちょっと気になっていたりすることが相手と同じであるほうが、同情や気づかう気持ちが起きやすくなります。
親が話を聞いてやりたいことに賛成してくれる境遇同士よりも、話を聞いてくれず反対ばかりする境遇同士のほうが同情心が生まれやすいのは、容易にイメージがつくのではないかと思います。
だれかから相談を受けたとき、相手の話を誠実に聞けること、心の痛みを理解できることはとても大切な能力です。ぜひ、困った人がいたら親身に相談にのってあげてほしいと思います。ただし、中にはそういった親切心を利用する人もいます。もし、それに乗じて相手が無理な要求をしてくるときは、き然とした態度をとるようにしましょう。