横田 トラウト選手も一発ホームランでも打ってやろうという気持ちだっただろうと思いますけれども、大谷選手の浩然の気というのがトラウト選手を圧倒していったんじゃないかと感じましたね。
それから、準決勝のメキシコ戦で9回裏に劇的な逆転勝利を呼んだのも大谷選手でしたね。先頭打者としてツーベースヒットを打って、ヘルメットを投げ捨てて全力疾走して二塁にまで到達して、ベンチに向かって叫びましたよね。あれで気の流れが変わって、勝ち運をこちらに引き寄せたと思うんです。
訓練で掴んだのか天性で会得をしているのかは分かりませんが、大谷選手は気の流れを変えることもできるんだなぁ、と。あの青年から学ぶことは実に多いですね。
自身の大義を背負い
世界で戦う大谷翔平
横田 とある出版社の方から聞いたのですが、この頃は中村天風さんの本が書店でも平積みになっているそうです。これは、大谷翔平さんの影響だと言っていました。そういう本で気について学んで知ったのか、元々体得しているのか、監督はどうご覧になりますか。
栗山 彼の頭の中には常に少し先が見えているような感じがします。そこから逆算して、今、自分がしたいこと、やらなければいけないことが分かっているのではないかと。WBCにしても、これを勝つと次世代の子供たちに希望のメッセージが送れるとか、日本の野球が世界に認めてもらえるとか、普通の人が考えていることとは違う大義がいつも流れているように感じることがありますね。
横田 ああ、なるほど。
栗山 普通の選手はああいう追い込まれた状況に直面すると、「もしダメだったら」というマイナスのイメージが頭の中に浮かんでいるように見えることがあります。
でも、翔平の場合、どんな場面に置かれてもそういうマイナス思考になっているようには見えないんです。100%プラスになるんだって信じて行動しているようです。